【映画】感想:映画「007/オクトパシー」(007シリーズ13作目)(1983年:イギリス)

007/オクトパシー [Blu-ray]

BS-TBS|007シリーズ【吹替】 https://bs.tbs.co.jp/movie/007/
放送 BS-TBS。2022年2月12日(土)

【※以下ネタバレ】
 

007シリーズ第13弾。テンポの良いジェット・コースター・ムービーに仕上がった快作!


009がロシアの秘宝“ファベルジュの卵”を手にしたまま東ドイツで謎の死を遂げた。事件の真相を追うボンドの前に現れたのは、大富豪カマル・カーン。謎の美女、オクトパシーを巻き込んでカーンが画策する陰謀の裏には、ソ連の反乱分子が企む世界制覇の野望が隠されていた! アクロスターを使ったスカイアクション、走る列車で繰り広げられる肉弾戦など、ジョン・グレン監督ならではのアクションセンスがフルに活かされたキレの良いシークエンスの連続! クライマックスではボンド・ビューティーズに囲まれて“Q”も大活躍だ!

 

あらすじ

 東ドイツ・ベルリン。ピエロの恰好をした男が、卵型の宝飾品を持ってイギリス大使公邸に転がり込み息絶える。

 007/ジェームズ・ボンドは、Mからロシア皇帝ゆかりの宝飾品「ファベルジュ・エッグ」の一つの精巧な模造品を見せられる。それは東ドイツで活動していた009が命と引き換えに入手した物だった。しかも、本物のファベルジュ・エッグの方は、サザビーズでオークションに出品されることになっていた。Mは過去三度同様にエッグがオークションにかけられていることから、ソ連の外貨稼ぎではないかと推測し、ボンドに出品者を探るように命じる。


 ソ連では首脳陣が軍縮について会議を行っていたが、タカ派のオルロフ将軍は軍縮に反対、それどころか軍事的優位を背景に西側に侵攻すべきだと主張し、首脳陣から冷たい視線を浴びせられる。


 サザビーズのオークションにはインドの大富豪カマル・カーンが現れ、相場を無視してエッグを入手しようと必死となったため、ボンドはこっそりエッグを偽物とすり替えた。落札したカマルはインドに戻ったため、ボンドも後を追い、カマルと接触すると本物のエッグを見せつけた。ボンドはすぐさまカマルの手下たちに襲撃され、何度も危機を切り抜けるものの、結局捕らわれてしまう。

 ボンドはカマルがオルロフ将軍を招き入れ、東ドイツの都市・カール・マルクス・シュタットで落ち合う約束をしているのを盗み聞きする。ボンドはカマルの屋敷を脱出すると、カマルと関係あるらしい女富豪オクトパシーの屋敷に潜入した。

 オクトパシーはカマルのビジネスパートナーであり、身寄りのない女子を引き取り、サーカスやビジネスの技術を教えて自立するすべを与えていた。オクトパシーは、ボンドにもビジネスパートナーになるように誘う。深夜、カマルはオクトパシーに無断で殺し屋たちを送り込みボンドを殺そうとするが、ボンドは死亡を装い屋敷を脱出する。

 カール・マルクス・シュタットでは、オルロフたちがオクトパシーの運営するサーカスの道具に宝石を隠して密輸を託すが、オクトパシーがいなくなると、すぐさま宝石を核爆弾にすり替えてしまう。ボンドはオルロフを脅して目的を問い詰める。

 オルロフはサーカスの次の巡業地である西ドイツのアメリカ空軍基地で核爆弾を爆発させ、それを米軍の核の誤爆と見せかけ、西側で反核運動を巻き起こすつもりだった。そして西側が核戦力を失えば、ソビエトがたやすく西側諸国を侵略できる、という算段だった。

 オルロフは、財宝のすり替えに気が付いたKGBのゴゴール将軍たちに追跡され、射殺された。一方、核兵器を積んだサーカスは米軍基地に到着し公演が始まるが、ボンドが駆け付け、寸前で爆発を阻止した。

 裏切られたと知ったオクトパシーは部下の美女軍団と共にカマルの屋敷に侵入するが、カマルに捕えられる。ボンドはカマルを追ってオクトパシーを奪回し、カマルは飛行機の墜落で死んだ。最後ボンドがオクトパシーといちゃついているシーンで〆。
 
 
 

感想

 評価は○(そこそこ)

 シリーズ12作目「ユア・アイズ・オンリー」(1981年)に続く「ロジャー・ムーア007」の二年ぶりの6本目。前作「ユア~」は、それまでの作品から雰囲気を一変、シリアスさ・非情さを前面に打ち出したスパイアクション映画と化していて面食らいましたが、本作はムーア007らしいユーモア路線に戻りました。しかしイマイチのめり込めないところがあり、評価はもう一つ。


 この映画は「陰謀あり、アクションシーンあり、美女とのロマンスあり、ユーモアあり」と、一応007らしい要素は満たしているのですが、どうにも話が分かりにくい……、前半はボンドがインドに出かけてファベルジュ・エッグにまつわる謎を調査するのですが、後半東ドイツに話が移るといきなり核爆弾による米軍基地爆破の陰謀に話がすり換わってしまい、「あれ、ファベルジュ・エッグの話はどこへ……?」と困惑しきりでした。

 見ているうちに、サーカスはオクトパシーが運営していて、普段はサーカスを隠れ蓑に密輸に利用しているらしいこと、またオルロフ将軍がそれを利用して、オクトパシーを騙し核爆弾を運ばせようとしていること、は解ったのですが……、しかし将軍がファベルジュ・エッグをニセモノにすり替えて売却していたのは何故なのか、の説明が全くない……、陰謀のための資金稼ぎなのか、はたまた単なる私服肥しのためか? その辺りの説明が一切ないまま終わるので、置いていかれた気分でした。

 また、クライマックスで、オクトパシーが裏切ったカマル・カーンに復讐するために部下の美女軍団と共にカマルの屋敷に侵入しますが、あんなサーカスのテクニックで侵入する必要あるのとかと…… 援軍としてボンドとQが熱気球で駆け付けるというのも必然性が全く無いし…… と「なぜそうなる」という場面がやたら多かったです。

 10作目「私を愛したスパイ」とか11作目「ムーンレイカー」とかは、秘密メカを駆使したり宇宙に飛び出したり、荒唐無稽さはあったものの、お話自体は一本筋が通っていて面白く見ることが出来たのですが、本作は前述のような諸々の要素が複合して、何かノリ切れないものがありました。シナリオの練り込みに問題があると言うか、そういう感じです。


 まあ、ムーア007恒例の常軌を逸したスタントシーンは今回も健在で、クライマックスでカマルが操縦するプロペラ機にボンドがしがみついているというシーンは、どう見ても本当にスタントマンが飛行している飛行機に張り付いています。信じられない…… 80年代は凄い事をやっていたもんです。


 KGBのゴゴール将軍(ウォルター・ゴテル)は、10作目「私を愛したスパイ」・11作目「ムーンレイカー」・11作目「ユア・アイズ・オンリー」に続く四度目の登場で、もうQとかマネーペニー並みのレギュラー化しているのにちょっと笑いました。


 まあ、本作は、ロジャー・ムーア007らしさはあると言えばあるのですが、「私を愛したスパイ」頃程には楽しめなかったな、というのが正直なところです。そろそろ制作スタッフも疲れてきたのかもしれません……
 

おまけ

 中盤、オルロフがエッグの「偽物」を叩き壊しカマルが残骸の中から盗聴器を見つけるシーンがありますが、ボンドが盗聴器を仕込んだのは「本物のエッグ」じゃなかったっけ……?
 
 カマル・カーン役のルイ・ジュールダン、見た顔だと思ったら、刑事コロンボの一作「美食の報酬」の犯人役でした。なるほど。
 

https://www.bs-tbs.co.jp/movie/007octopussy/
007/オクトパシー【吹替】


2022/2/12(土)
よる9:00~11:24


◆キャスト
ロジャー・ムーア
ルイ・ジュールダン
モード・アダムス


◆スタッフ
1983年/イギリス
監督:ジョン・グレン

 

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