【SF小説】感想「エスパー大戦」(宇宙英雄ローダン・シリーズ 669巻)(2022年7月20日発売)

エスパー大戦 (ハヤカワ文庫SF SFロ 1-669)

http://www.amazon.co.jp/dp/4150123721
エスパー大戦 (ハヤカワ文庫SF SFロ 1-669) 文庫 2022/7/20
エルンスト・ヴルチェク (著), 若松 宣子 (翻訳)
出版社:早川書房 (2022/7/20)
発売日:2022/7/20
文庫:288ページ

【※以下ネタバレ】
 

庇護者のダオ・リン=ヘイを捕らえて以来、3カ月にわたって《ワゲイオ》は、カルタン人艦隊による執拗な追撃を受けていたが……


ニュレロ星系でダオ・リン=ヘイを捕らえて以来、3カ月にわたって、ニッキ・フリッケルひきいる“ワゲイオ”は、カルタン人艦隊による執拗な追撃を受けていた。あらゆるPIG基地はカルタン人の艦隊によって封鎖され、損傷を受けた“ワゲイオ”を修理することもできず、ひたすら逃げまどっていたのだ。やむなく、唯一その存在を知られていないと思われる恒星ムウレダのコロナ内に位置する衛星基地黄昏へと向かうが…。

 

あらすじ

◇1337話 エスパー大戦(エルンスト・ヴルチェク)(訳者:若松 宣子)

 M-33(三角座銀河)。ニッキ・フリッケルたちは、NGZ446年6月にダオ・リン=ヘイを捕虜にしたものの、以後カルタン人たちの執拗な追撃を受け、基地に寄航できないまま三か月間もM-33をさ迷い続けていた。やがて船は行動不能に陥り、ニッキたちは救命艇でカルタン人が禁断の地としているラクノル星雲に逃げこんだ。星雲の中では「クトルの声」という存在が、惑星クトルIIへの着陸を指示してきた。(時期:不明:NGZ446年9月頃)

※初出キーワード=サヤアロナー。ラクノル星雲。恒星クトル。惑星クトルII。



◇1338話 六日目のロボット(エルンスト・ヴルチェク)(訳者:若松 宣子)

 ニッキたちは惑星クトルIIに着陸し、この星のロボット文明とコンタクトして、ロボットたちの過去を知った。ロボットたちは五万年前カルタン人に創造されたが、やがてカルタン人との接触を失い、独自に発展を遂げた。その後、ロボットたちは創造主カルタン人やマーカル種族を含むM-33の二十三の種族を支配下におき、弾圧された被支配種族は退化してしまった。しかし異銀河から来訪したガイズ=ヴォールピーラー種族がロボットたちの支配を止めさせ、解放されたカルタン人たちは再度文明を発展させた。

 ニッキたちはラクノル星雲を離れた後、カルタン人に捕えられ、全知者の捕虜となるが、全知者はギャラクティカーに対し、スティギアンを共通の敵とする同盟を提案してきた。(時期:不明:NGZ446年9月頃)

※初出キーワード=≪ナルガ・サント≫


あとがきにかえて

 AIが登場する小説の話。


感想

・前半エピソード 原タイトル:KRIEG DER ESPER(意訳:エスパーの戦争)

 M-33でPIGがカルタン人から逃げ回るただそれだけの話。最近のローダン・シリーズでは珍しい、中身のないスッカスカのエピソードで、読んでいて眠気を催しました。これはひどい……

 ところで本の裏表紙に載っているあらすじ紹介が思いっきり間違っています。
誤)三ヵ月間逃走したあと、衛星基地黄昏に向かった
正)衛星基地黄昏に向かったあと、三か月間逃走した

 文章がごちゃごちゃした話ではありましたが、時間の前後関係を間違えないでほしい……



・後半エピソード 原タイトル:DIE SECHSTAGEROBOTER(意訳:六日ロボット)

 PIGがラクノル星雲で謎のロボット文明と遭遇する話。前回とは違い中身が濃く、なかなか読みがいのあるエピソードでした。ヴルチェクは、こっちにアイデアをつぎ込むため、前回は手を抜いたのだろうか……

 カルタン人の全知者たちが、力の集合体エスタルトゥに出現した岩塊宇宙船「丸太」とそっくりの「≪ナルガ・サント≫」に乗っている、というオチがなかなか良い感じ。こういう展開を、サイクルも終わりが近づいた19巻目(=サイクル残り6巻)に出すのではなく、もっと早めにやってほしかったですよ。


 P273に「サイコゴン」という単語がありますが、これは明らかに過去のエピソードでは「プシコゴン」と訳されていた物ですね。用語の統一が出来ていない……、複数翻訳者が並行して訳している以上、こういう事態は十分起こりうるわけで、それを防ぐためにチェックすべきがハヤカワ編集部・ローダン担当の仕事だと思う訳ですが、うまく機能していないのかな……?
 
 

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