【数学】感想:NHK番組「笑わない数学」第8回「カオス理論」(2022年8月31日(水)放送)

カオス―カオス理論の基礎と応用 (Information & computing)

笑わない数学 NHK https://www.nhk.jp/p/ts/Y5R676NK92/
放送 NHK総合。全12回。

www.nhk.jp
【※以下ネタバレ】
 

https://www.nhk.jp/p/ts/Y5R676NK92/
パンサー尾形貴弘が難解な数学の世界を大真面目に解説する異色の知的エンターテインメント番組! 「リーマン予想」「フェルマーの最終定理」「連続体仮説」「四色問題」「ガロア理論」「abc予想」「確率論」「P対NP問題」「カオス理論」「ポアンカレ予想」「暗号理論」「虚数」・・・。天才数学者をも苦しめてきた数々の難問、そして美しくも不思議な知の世界を、1回30分ワンテーマ、ギャグ封印で、トコトン分かりやすく掘り下げる!


MC 尾形貴弘 (パンサー)

 

第8回「カオス理論」(2022年8月31日(水)放送)

 

内容

笑わない数学「カオス理論」
[総合] 2022年08月31日 午後11:00 ~ 午後11:30 (30分)


パンサー尾形貴弘が数学の難問を大真面目に解説する「笑わない数学」。今回は「カオス理論」。数学で未来を予測することはできるのか?天才たちがたどり着いた結論とは。


かつて数学者はこんな確信を持っていた。数式を使えば未来を予測できる、と。たしかに天体の動きや、投げたボールの軌道は予測できるように思えた。しかし19世紀末以降、その信念をくつがえす事実が次々に発見され、世の中の多くは予測不可能だということが、数学的に明らかにされていった。わずかな誤差が急激に膨れ上がり、結果が予測不能になる「カオス」。サッカーのシュートに隠された「カオス」の謎にも迫る。

 
●初期値敏感性

 「大砲から弾を発射した時、どれくらいの距離を飛ぶか」は、数式によって表せ、発射時の弾の速度と打ち出す角度が解れば距離が算出できる。この際、角度や発射時の速度が多少変わっても、到達する距離はさして変化はない。そのため、数学ではかつては最初の誤差はあまり大した問題ではない、とされていた。

 ところがその常識が覆されたのが19世紀だった。19世紀のスウェーデン国王・ノルウェー国王だったオスカル2世は「太陽系のように星の集まりは、ずっと安定しているのか数学的に示せ」という問題を出した。

 もし星が二つしかない場合には、初期値が多少変化してもあまり変わりなく軌道を回り続ける。ところがフランスの数学者アンリ・ポアンカレは、星が三つになると、初期値を少し変えただけで、その後の軌道が全く異なることを発見した。

 このように、初期値がホンの少し変わっただけで、結果が大きく変わってしまうことを「初期値敏感性」という。身近な例では「二重振り子」も、スタート地点が目に見えないくらい少し変わっただけで、揺れ方がまるで別物になってしまう。



バタフライ・エフェクト

 1961年、マサチューセッツ工科大学の気象学者エドワード・ローレンツは、コンピューターで気象の予測を計算させているうちにあることに気が付いた。ある計算を行った後、もう一度同じ計算をしたのに、結果がまるで違っていたのである。その理由は、二回目はコンピューターが初期値をまるめていたせいで、

一回目:0.506127
二回目:0.506

で計算したら、一回目と二回目で結果が大きく異なっていたのである。

 このような事象をローレンツは「ブラジルで蝶が羽ばたけば、テキサスで竜巻が起きる」というような表現を行い、「バタフライ・エフェクト」と呼ばれるようになった。



●カオス(混沌)

 メリーランド大学の数学者ジェームズ・A・ヨークとリー・ティェンイェンは、初期の値が少し変わると結果が大きく変わることを論文の中で「カオス(混沌)」と名付けた。

 このカオスは意外と身近な現象である。例えば、ピザの生地を作る時、小麦粉をこねて何度も何度も畳んで伸ばすことを繰り返す。その生地の中に粒子が入っているとして、最初はすぐそばにある粒子でも、畳んで伸ばしてを繰り返すと、最終的には全くバラバラの場所に分かれてしまう(初期値が大差なくても結果は大きく変わる)。これは数学の世界では「パイこね変換」と呼ばれる。

 かつて数学の世界で考えられていたような「初期値が解れば結果も予測できる」というのは間違いで、世の中には結果が予測できないことがたくさんあったのである。



●マルデンブロ集合

 ポーランド生まれの数学者ブノワ・マンデルブロの研究で、カオスの初期値敏感性をビジュアル化した「マンデルブロ集合」というものが見つかった。この集合は、一部を拡大しても元の図形と同じになる「自己相似」という特徴がある。

 自己相似とは自然界にも存在し、例えばシダの葉も、全体を見ても、その一部を拡大しても、やはり同じような形をしている。他にも肺や銀河の分布も自己相似である。



ナビエ・ストークス方程式

 ナビエ・ストークス方程式は、水や空気などの「流体」の動きを表す方程式。ところが流体は、「整然とした流れ(層流)」が「不規則な流れ(乱流)」にどんな条件で変わるのか、がはっきりわかっておらず、解答に100万ドルの懸賞金がかかっている。

 1997年6月3日にフランスで行われたサッカーの試合ブラジル対フランス戦。ブラジルのロベルト・カルロス選手はフリーキックですさまじいカーブのかかったシュートを放ち見事ゴールを決めた。

 ボールは最初まっすぐ進んでいたが、その時はボールの後ろに乱流が発生しており、滑るように進んでいた。ところがある瞬間、ボールの後ろの流れが層流に変化し、ボールの速度が落ちたことでスピンの影響を受けることになり、ボールは劇的にカーブを描いてゴールした。サッカーの一流選手はナビエ・ストークス方程式を理解しているのかもしれない。



感想

 今回はカオスがお題。ポアンカレのお話(三体問題ですね)から始まって、バタフライ・エフェクトを通って、最終的には聞いたことも無いナビエ・ストークス方程式までたどり着く、中身たっぷりの回でした。イイネ。

※参考

天才UFO 道具・力学19:カオス現象(1963年:ローレンス)
https://tensai-ufo.com/text/tex88.htm

tensai-ufo.com

 
 
3時間でカオス理論がわかる本
3時間でカオス理論がわかる本―街角の不思議から応用の可能性まで 「混沌」を科学する新しい数学理論 (HBJ BUSINESS EXPRESS)
 
 
笑わない数学(NHKオンデマンド)
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