【SF小説】感想「ブラックホール攻防戦」(宇宙英雄ローダン・シリーズ 674巻)(2022年10月4日発売)

ブラックホール攻防戦 (ハヤカワ文庫SF SFロ 1-674)

http://www.amazon.co.jp/dp/4150123810
ブラックホール攻防戦 (ハヤカワ文庫SF SFロ 1-674) 文庫 2022/10/4
クルト・マール (著), エルンスト・ヴルチェク (著), 工藤 稜 (イラスト), 井口 富美子 (翻訳)
出版社:早川書房 (2022/10/4)
発売日:2022/10/4
文庫:271ページ

【※以下ネタバレ】
 

みずからの艦隊を撃破され激怒したソト=ティグ・イアンは、銀河中央部の超巨大ブラックホールで、銀河系を殲滅すると宣言した!


みずからの艦隊を撃破され、さらに腹心のハンター旅団指揮官ウィンダジ・クティシャを殺されたソト=ティグ・イアンは激怒し、銀河中央部の超巨大ブラックホールを使って銀河系を殲滅すると宣言した!事態を憂慮したGOI代表ジュリアン・ティフラーは、ギャラクティカ連合艦隊十万隻を銀河中心部に集結させ、ロボット艦隊を使ってソト=ティグ・イアンのたてこもるウドゥル・ステーションに攻撃をしかけたが…!?

 

あらすじ

◇1347話 ブラックホール攻防戦(クルト・マール)(訳者:井口 富美子)

 スティギアンは銀河系を破滅させるため、銀河系中央ブラックホールを「点火」すると予告し、ティフラーたちはそれを阻止するため、十万隻の艦隊を銀河系中枢に集結させた。ティフラーたちの攻撃はまるで通用しなかったものの、ナックたちがスティギアンの企みを阻止し、さらにキャプテン・アハブ/ストーカーがスティギアンを決闘で倒して戦いに決着をつけた。銀河系は恒久的葛藤の支配から解放されたが、“それ”はドリフェルが危険を生み出すと言い、ネットウォーカーに連絡するように警告した。(時期:~NGZ446年12月31日)

※初出キーワード=スーパー・グレープバイン



◇1348話 エスタルトゥ・サ-ガ(エルンスト・ヴルチェク)(訳者:井口 富美子)

 力の集合体エスタルトゥでは、オーグ・アト・タルカン像が言葉を発し恒久的葛藤を否定したため、大混乱が発生していた。ネットウォーカーは、永遠の戦士に対し、奇跡「不吉な前兆のカゲロウ」を消滅させると予告し、降伏を勧告した。ローダンは、“それ”の年代記作者から、超越知性体エスタルトゥは“それ”の「姉」であり、五万年前に遠方の銀河からの救難信号を受信し、救助に向かったまま行方不明になったことを知らされる。さらにローダンは、永遠の戦士イジャルコルからプテルス種族の歴史を教えられた。

 五万年前。内戦状態だったプテルス種族の前にエスタルトゥが現れて和平を実現させ、さらに力の集合体を留守にする間の管理をプテルスに任せることを伝えた。しかしエスタルトゥが去った後、プテルスの中でも狡猾な一分派シングヴァが陰謀により徐々に権力を奪っていった。数世紀後、エスタルトゥの救援対象であるカルタン人たちが巨大宇宙船《ナルガ・サント》で出現し、オーグ・アト・タルカン第三の道の哲学を広め始めた。しかしシングヴァはオーグ・アト・タルカンを危険視して排除を決め、《ナルガ・サント》はどこかに消えた。シングヴァは第三の道の哲学を恒久的葛藤に捻じ曲げ、またナックの力を借りて奇跡を建設していった。

 ローダンはイジャルコルを味方につけることに成功した。(時期:~NGZ446年12月6日~8日~)

※初出キーワード=“それ”の年代記作者。ハンガイ銀河。ストレンジネス・ショック。


あとがきにかえて

・SWI(スイス公共放送協会国際部)の仕事をしている話
・関西の両親の元に引っ越した話


感想

・前半エピソード 原タイトル:AM EREIGNISHORIZONT(意訳:事象の地平線にて)

 銀河系が遂に恒久的葛藤/戦争崇拝から解放されるエピソード。もっとも仕事の殆どをナックとストーカーという他人に頼って、ギャラクティカーはほぼ何もしていないので、イマイチ満足感が薄い……、

 あと銀河系中央ブラックホールの名前が前巻(673巻)と違います……
 ↓
 673巻 P265 デンゲジャア・ウヴェソ
 674巻 P20 デンジジャ・ユヴェソ

 この辺り、もう少し注意深く編集していただきたいものです。



・後半エピソード 原タイトル:DIE ESTARTU-SAGA(意訳:エスタルトゥ・サ-ガ)

 力の集合体エスタルトゥでの五万年前の出来事が明かされるエピソード。

 近年に無い読みづらさでビックリする話。まず三人称と一人称の文章が入り混じり、それだけでもややこしいのに、さらに一人称の語り手「わたし」が「“それ”の年代記作者」「ローダン」「アラスカ・シェーデレーア」「アトラン」と次々入れ替わるので混乱してきます。

 また話の内容も、今まで語り切れなかった設定をサイクル終了(1349話)までに一気に片付けておこうとばかり、「“それ”の年代記作者」「クエリオン種族」「プテルス」が、それぞれが過去語りを始めるので、内容が充実というより詰め込み過ぎの展開となっており、なんともまあせわしないというかまとまりがないというか……
 
 あと明らかな誤字が一つ。P184「紀元前49万9990年」は一桁多く取り過ぎ。「紀元前4万9990年」が正解です。約五万年前の話なんですから。
 
 

650巻~675巻(「ネットウォーカー」サイクル)の他の巻の内容・感想は以下へどうぞ

perry-r.hatenablog.com

ローダン・シリーズ翻訳者一覧は以下へどうぞ

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