【歴史】感想:歴史番組「ダークサイドミステリー」シーズン3(2021年版)「大江戸ニセモノ捜査網 世界よ、これが日本の裏スゴ技だ!」(2021年7月1日(木)放送)

椿井文書―日本最大級の偽文書 (中公新書 (2584))

ダークサイドミステリー NHK https://www.nhk.jp/p/darkside/ts/4847XJM6K8/
放送 NHK BSプレミアム。毎週木曜夜9時放送。

www.nhk.jp
【※以下ネタバレ】
 

他の回の内容・感想

perry-r.hatenablog.com
 

本当の謎は、人間の闇


背筋がゾワゾワ、心がドキドキ、怖いからこそ見たくなる。世界はそんなミステリーに満ちている。世間を揺るがした未解決の事件、常識を越えた自然の脅威、いにしえの不思議な伝説、怪しい歴史の記録、作家の驚異の創造力…。こうした事件・出来事を徹底再検証!
人智を超えた謎に迫る「幻解!超常ファイル」を拡大スピンオフ!今度は人間や自然が生み出した謎と恐怖に満ちた事件・伝説の正体に、栗山千明志方あきこ中田譲治のダークなトライアングルで引き続き迫ります。

 

大江戸ニセモノ捜査網 世界よ、これが日本の裏スゴ技だ! (2021年7月1日(木)放送)

 

内容

ダークサイドミステリー▽大江戸ニセモノ捜査網 世界よこれが日本の裏スゴ技だ!
[BS4K] 2021年07月01日 午後9:00 ~ 午後10:00 (60分)


天下泰平の江戸時代はニセモノ天国!ニセ人魚、ニセ記録「椿井(つばい)文書」、ニセ貨幣、ニセ絵画、ニセ酒!世界&現代を驚かせた、衝撃のだましテクニックを徹底捜査!


「人魚は伝説の生物と思っていたが、実在したのか!?」19世紀ヨーロッパ・アメリカの人々に衝撃を与えた、謎の人魚ミイラ。実は日本伝統の匠(たくみ)の技を結集したニセモノだった!裏スゴ技の正体とは?▽最新報告!昨年、世間を騒然とさせた江戸期のニセ記録「椿井(つばい)文書」。現代の研究者もだまされた巧妙かつ壮大なスーパーテクニックとは?▽驚きの技術!ニセ貨幣、ニセ絵画、ニセ酒も登場!あなたは見破れるか?


【ナビゲーター】栗山千明,【ゲスト】作家…荒俣宏,歴史研究家…原田実,【語り】中田譲治,【司会】青井実

 
 今回のテーマは「江戸時代の偽物」。


●日本発の人魚のミイラ

 大英帝国博物館には、18世紀に日本から持ち込まれた「人魚のミイラ」が有る。イギリスには1822年に上陸した模様で、当時の記録によれば感想として「人魚は伝説上の生物と思っていましたが、本当にいると解りました」とか書かれている。もちろんこれは偽物で、上半身は猿・下半身はサケ、を上手くつなぎ合わせて作ったフェイクである。日本全国には10体もの「人魚のミイラ」が現存する。

 18世紀頃の日本では人魚は信仰の対象で、人魚のミイラの漢方薬や、厄除けとなる人魚の絵、といった商品が存在していた。そして人魚ミイラは興行用の見世物として「見るだけで不老長寿のご利益がある」などと宣伝されていた。

 実は今の日本はその人魚ミイラの剥製を作る技術を持つ人がまだいる。作り方は、

1)猿とサケを「しょうゆとミョウバンを混ぜた液」に一か月漬け込む。これで皮をなめし、半永久的に腐らなくなる
2)皮の中に漂白した骨と木くずなどを入れて猿とサケを合体させる
3)つなぎ目の部分に和紙をのりとにかわで何重にも貼り付けてつなぎ目を隠す


 実は日本の人魚ミイラはアメリカのエンタメにも大きな影響を与えた。興行師P・T・バーナムは、LIFE誌が「この1000年で最も重要な功績を残した世界の人物100人」の中に選出した人物。そのバーナムが1840年、日本の人魚ミイラを持ち出して、「フィジーでグリフィン博士が発見したフィジー人魚」という触れ込みで見世物にして大ヒット。ミイラは偽物、実はグリフィン博士もバーナムの仲間、とフェイクだらけだった。



●大江戸ニセモノ・コレクション

・ニセモノ1 ニセ金

 江戸時代末期の貨幣「天保通宝」。価値は現在の300円ほどで庶民も使ったお金だが、なんと、土佐藩会津藩薩摩藩など、現在の県に当たる藩がニセ金を作っていた。特に薩摩藩天保通宝は本物と見まがうほどの精巧さだったが、それには理由があった。

 薩摩藩琉球王国を実質支配しており、幕府から琉球で使うための貨幣「琉球通宝」を作る許可をもらい、江戸から職人を呼び寄せた。しかし琉球通宝は殆ど作らず、その代わりにニセの天保通宝を量産したのである。薩摩藩は200億円分ものニセ天保通宝を作り、それは討幕運動の資金源となったという。


・ニセモノ2 ニセ酒

 とある酒造が残した文書には、「白雪」「剣菱」「政宗」といった有名ブランド酒の偽物を作るレシピが記載されていた。当時は有名ブランド酒の偽物が出回ったらしい。

 また当時の学者は参勤交代で江戸にくる武士に対しての江戸生活の手引書で、「一升百二十銭の安酒は石灰だらけの毒酒だから気を付けろ」と書き記している。お酒は古くなると酸化して酸っぱくなるが、安酒はそれを誤魔化すためアルカリ成分の石灰を添加していた。それで古くなったお酒が新しくなるわけではないのだが、江戸の住民はそれでも平気で飲んでいたらしい。


・ニセモノ3 ニセ絵画

 室町時代の伝説の画家で「画聖」と呼ばれる雪舟水墨画で知られるが、実は江戸時代のエリート画家集団「狩野派」が雪舟の絵を模写しまくっていた。狩野派は過去の名画を模写するのが修行の一つだったが、そういう絵を、ステイタスを求める新興の家が、ニセ物と知りつつ家の格付けのため購入していたらしい。



●驚異の偽造文書「椿井文書」

 2020年に発表された本で、大掛かりな偽造文書「椿井文書(つばいもんじょ)」の存在が明らかにされ、歴史の研究者に衝撃を与えた。その点数は実に1000点以上。近畿地方に関する文書で、時代は奈良時代から江戸時代まで幅広い。

 驚くことにこれを作成したのは、たった一人、国学者の椿井政隆(1770~1837)。作成したのは、地図、合戦に参加した人間のリスト、家系図、その他諸々。椿井が国学者として活動した記録はない。

 椿井はその土地の人たちの求めに応じて、あるいは自分から営業をかけて、自分が作った偽物を発見した古文書として売り込んだ。例えば、大昔に失われた建物が描かれた絵図(ニセモノ)を持ち出したり、利権争いをしている人たちのところに行き、片方が有利になるようなでっち上げの地図を取り出したりした。


 何故、椿井文書は今までバレなかったのか? 理由は三つ。

(1)筆跡を変える
  文書毎に実に巧みに筆跡を変えており、一人の人間が書いたものとは思えないほど。

(2)写しを重ねる
  文書に、「この文書はXX年にオリジナルが書かれ、XX年に加筆されたものの、さらに写しである」云々という注意書きを付けることで、いつ書かれた文書なのか解らなくさせていた。これで大昔の文書が新しい絵の具で描かれていても疑いがかからない。

(3)複数の偽文書を用意する
  ある偽文書を作ると、それに関連した年表、さらにその年表に登場する人物が出て来る家系図・連名帳、等々の複数の文書まで作り、調べれば調べる程偽物だと解らなくさせる。


 もっとも、椿井は金もうけのためにやったのではないらしく、どうも「自分が理想とする架空の歴史」という物があり、それを表現しようとして文書を作りまくったらしい。


感想

 今回は軽めの江戸時代のフェイク商品特集。人魚ミイラというおどろおどろしい物からスタートしつつ、ニセ金・ニセ酒・ニセ絵画という現代でもある偽商品の話題に移り、最後はとんでもない規模の偽造文書ネタで〆。面白い回でした。あとちょこっと「大江戸捜査網」のBGMを使っているのにワロタ(笑)
 
 

光と闇のナビゲーター 栗山千明
MC 青井実 (アナウンサー)
語り 中田譲治
テーマ音楽 志方あきこ

 
 

他の回の内容・感想は以下のリンクからどうぞ

perry-r.hatenablog.com
 
 
The Feejee Mermaid and Other Essays in Natural and Unnatural History
The Feejee Mermaid and Other Essays in Natural and Unnatural History