【映画】感想:映画「007/美しき獲物たち」(007シリーズ14作目)(1985年:イギリス)

007/美しき獲物たち [Blu-ray]

BS-TBS|007シリーズ【吹替】 https://bs.tbs.co.jp/movie/007/
放送 BS-TBS。2022年2月13日(日)

【※以下ネタバレ】
 

007シリーズ第14弾。ロジャー・ムーアがボンドを演じた最後のアクション巨編!


イギリスが開発した最新型軍事防衛システム用のマイクロチップKGBに流出。その裏にマイクロチップの市場独占を狙うゾリンの計画が隠されていることを知ったボンド。しかし既にシリコンバレーを水没させるという恐るべき企みが着々と進行していた…。
エッフェル塔をバックに繰り広げられるカーアクション、サンフランシスコでの消防車を使ったカーチェイスなど見どころがたっぷり!ミュージシャンのグレイス・ジョーンズの登場も見逃せない。ロジャー・ムーアが最後の作品で有終の美を飾るアクション超大作!

 

あらすじ

 イギリスは、核爆発時に発生する電磁パルスに耐えられる特製のマイクロチップを秘密裏に開発させていたが、そのチップがソ連に流出していることが判明した。チップの製造企業は、半年前にフランス人企業家マックス・ゾリンの会社に買収されており、Mはゾリンがソ連に流したと見て007/ジェームズ・ボンドに調査を命じる。

 ゾリンは競馬の馬主としての顔もあり、ゾリンの持ち馬は血統的には全く大したことがないにもかかわらず、レースで勝利を続けていた。ボンドはゾリンが牧場で馬の競売を行うことを知り、客に扮して牧場に乗り込む。そしてゾリンの馬には、マイクロチップと天然ステロイド注入装置が埋め込まれ、不正で勝利を挙げていることを掴む。しかしボンドはゾリンに正体を見抜かれ、殺されそうになり、死を偽装してなんとか逃走した。


 ゾリンはKGBのゴゴール将軍から、ボンドを勝手に殺したことを叱責される。ゾリンは元々はKGBのエージェントだったが、ゾリンはもはやKGBに忠誠心を感じておらず互いに相手を信用していなかった。また、ゾリンは、マイクロチップ事業でつながりのある業者を相手に、シリコンバレーの企業に代わって世界のチップ市場を独占する「メインストライク計画」を発表し、出資を募る。


 ボンドはアメリカに飛び、CIAから、ゾリンがカリフォルニアで石油事業を行っていること、またモルトナーという元ナチのステロイド研究者によって生み出された人工の天才らしいこと、を知らされる。同じ頃KGBのゴゴール将軍も、ゾリンの周囲にスパイを送り込み情報収集に当たっていた。

 やがてボンドは、ステイシー・サットンという女性に出合い、彼女がゾリンに父親の石油事業を破産させられたことを知る。ボンドたちはゾリン一味の襲撃をかわし、ゾリンが廃坑に大量の爆薬を運び込んでいることを発見する。ゾリンの「メインストライク計画」とは、石油採掘などを隠れ蓑に、サンアンドレアス断層を爆破して大地震を発生させ、シリコンバレー一帯を海に沈め、マイクロチップ関連企業を消滅させる、というものだった。

 ゾリンは廃坑に起爆用の爆弾をセットすると、口封じのため作業員たちに銃を乱射してから飛行船で逃亡した。ゾリンの恋人メイ・デイは、裏切られた恨みからボンドに協力し、地震を阻止するため命がけで廃坑から爆弾を運び出し爆死した。ゾリンはステイシーを飛行船で拉致するが、追ってきたボンドとゴールデンゲートブリッジの上で格闘となり、橋から転落して死亡した。

 最後。ゴゴール将軍は、ボンドが(ソ連が技術を盗みだす相手である)シリコンバレーを救ってくれたとして、レーニン勲章を送ろうとするが、ボンドは行方不明だった。最後、Qがロボットをボンドの家に送って偵察すると、ボンドがステイシーとイチャイチャしているのを見つけるシーンで〆。
 
 
 

感想

 評価は○(まあまあ)

 シリーズ13作目の「オクトパシー」(1983年)に続く「ロジャー・ムーア007」の二年ぶりの7本目にして、ムーアの最後のボンド作品。前作「オクトパシー」の派手なお祭り映画路線からまたシリアスな方向に揺り戻しましたが、派手なアクションシーンも多々あり、まずまずの内容でした。


 本作は、コントめいたお笑いシーンやQの秘密メカなどは登場せず、方向性としてはシリアスに徹した12作目「ユア・アイズ・オンリー」(1981年)寄りですが、ボンドのとぼけた台詞、派手なアクション、悪人の壮大な陰謀、ボンドと美女たちとのお色気、等の要素が盛り込まれ、「ユア~」ほど堅苦しい展開でも無かったため、それなりに楽しく視聴できました。シリーズは「ユア・アイズ・オンリー」「オクトパシー」と、個人的にイマイチ感が漂う作品が続きましたが、ムーアの最後のボンドで持ち直したのはちょっとホッとしましたね。


 ストーリーは、東西冷戦は背景設定程度にとどめ、メイン要素は「悪の大金持ちがさらなる事業の拡大を狙って大陰謀を企む」というあたりが、3作目「ゴールドフィンガー」(1963年)を彷彿とさせました。まあ、今回のラスボスで、クリストファー・ウォーケンが演じたマックス・ゾリンはゴールドフィンガーほど面白いキャラでは無く、もっと冷酷かつ悪辣な男でしたが……

 ゾリンは、今までのボンド映画のラスボスとはいささか趣が違い、自ら現場に出て(?)悪事を働くタイプで、サンフランシスコ市庁舎まで来て自分で銃を撃ったり火炎瓶で放火したり、廃坑ではサブマシンガンを乱射し、最後はゴールデンゲートブリッジで斧を片手にボンドに襲い掛かるなど、荒事も部下任せにしない結構アクティブなキャラクターでした。ウォーケンはボンド映画のファンだったそうで、もしかすると結構ノリノリで演じていたのかもしれません。


 本作は失笑するようなあからさまなコントシーンは無かったものの、

・冒頭、ボンドがアラスカでスノーモービルのスキー部分を使ってスノーボード的に利用して滑り降りる。しかもその際に妙に陽気な音楽が流れる。

・パリでパラセールで逃げる暗殺者を車で追跡中、衝突されて車の後ろ半分が吹き飛ばされ、前半分だけで必死に走行

・サンフランシスコでボンドが消防車を奪って逃走、追いかけて来たパトカーが可動橋が開くのに引っかかって多重衝突

 など、まあ息抜き的に面白いと思えるシーンはありました。あからさまなギャグよりはこれくらいに抑えている方が007らしいと言えるかもしれません。


 今回も命がけのスタントシーンは健在で、なんとゴールデンゲートブリッジの上の方でアクションするシーンを本物を使って撮影しています。橋の上の方に人がつかまっている場面なんか、見ているだけで変な緊張感に襲われて、もう平静ではいられませんでした。よくこんな危険なシーン思い付いて撮影するもんだとつくづく感心しました。


 それにしても、この映画の「1980年代感」の凄さ。これまでの007映画は視聴していても「やんわりと時代を察することが出来る」程度でしたが、本作は「テーマ曲はデュラン・デュランが担当で、めちゃくちゃ80年代ノリ」「ミュージシャンのグレイス・ジョーンズがボンド・ガールの一人として登場」「クリストファー・ウォーケンがラスボス」など、どこをどう取っても1980年代と主張していて、これほど時代感が出ているボンド映画も珍しいのでは……


 ロジャー・ムーアはこの映画を撮影した時、57歳だったそうで、よく言えば顔の彫り、悪く言えばしわ、がさすがに深くなっており、見ている方としては不満は無かったのですが、ムーア本人的にはアクション映画は結構きつかったのかもしれません。まあ、ロジャー・ムーアの最後の花道としては十分な出来の映画だったと言えましょう。


 しかし、何が「美しき獲物たち」だったんでしょうかね……?

おまけ

 前半ボンドと共に活動したチベットというキャラクター。どこかで見たことがあるよなぁ……と思って首をひねって調べてみたら、パトリック・マクニーという俳優で、刑事コロンボの「歌声の消えた海」で客船の船長を演じていました。そうそう、そうでした。

 

https://www.bs-tbs.co.jp/movie/007viewtoakill/
007/美しき獲物たち【吹替】


2022/2/13(日)
午後2:00~4:30


◆キャスト
ロジャー・ムーア(吹替:広川太一郎)、クリストファー・ウォーケンタニア・ロバーツ、グレイス・ジョーンズ


◆スタッフ
原題:A View To A Kill
1985年/イギリス
監督:ジョン・グレン

 

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