【歴史】感想:NHK番組「松本清張と日本の黒い霧 未解決ミステリー」

Nスペ 未解決事件

松本清張と日本の黒い霧 NHK https://www4.nhk.or.jp/P8253/
放送 NHK BSプレミアム

【※以下ネタバレ】
 

内容

松本清張と日本の黒い霧 未解決ミステリー
[BSプレミアム] 2023年03月25日 午後4:05 ~ 午後5:06 (61分)


占領期の未解決事件の謎に挑んだ作家・松本清張の知られざる闘い!衝撃のノンフィクション「日本の黒い霧」誕生の舞台裏とは?発掘した肉声から、巨匠の創作の秘密に迫る!


『小説帝銀事件』で“占領期の闇”の奥に分け入った松本清張は、未解決の怪事件の数々に挑む。国鉄総裁が突然失踪し、無残な轢死体で発見された「下山事件」。無人の電車が暴走し、大惨事を起こした「三鷹事件」。機関車が脱線転覆した「松川事件」。大胆な推理から浮かび上がる“巨大な謀略”とは? ノンフィクションの金字塔『日本の黒い霧』創作の秘密を、発掘した本人の音声記録が明かす!巨匠の魅力を3人の識者が読み解く。


【コメンテーター】横山秀夫保阪正康みうらじゅん,【出演】大沢たかお要潤,【語り】伊東敏恵

 
「日本の黒い霧」は松本清張が書いたノンフィクション。日本がアメリカに占領されていた1945年~1952年に発生した以下の事件
 
1948年 帝銀事件
1949年 昭和電工汚職事件
1949年 下山事件
1949年 松川事件
1951年 鹿地亘事件
1951年 白鳥事件
1952年 「もく星」号遭難事件
 
について、その背後に謀略があったと主張した。


 その中の一つ、下山事件(しもやま-)とは国鉄総裁・下山定則が1949年7月5日に突然失踪し、翌6日未明に轢死体で発見されたという事件。当時国鉄GHQ・政府から大量の人員整理を指示され、下山は労組との交渉に明け暮れていたため、警察は他殺・自殺の両面から捜査を行った。

 そして、捜査一課は5日の昼間に下山と思しき人物が普通に町中を歩いていたのを複数の人間に目撃されていたことから自殺説を取った。ところが知能犯を相手とする捜査二課は、目撃証言は決定的ではないこと、死体に生きていた人間がはねられた場合に出来る内出血が見られないこと、下山の眼鏡が現場付近で見つからないこと、から、殺されてから列車にひかれたという他殺説を取った。結局事件は自殺・他殺とも断定できないままに終わった。


 この年の国鉄関係の事件は、下山事件にとどまらず、

三鷹事件 … 1949年7月15日 三鷹駅無人列車が暴走・脱線し死者6人
松川事件 … 1949年8月17日 松川・ 金谷川駅間でレールが外され列車が脱線

 と短期間に立て続けに発生している。


 清張は、この三つの事件はGHQ・政府が起こしたもので、犯行の罪を国鉄の労組内の共産主義者に擦り付け、彼らを叩くことが目的であると推理した。具体的にはGHQ内部の諜報組織・Z機関の犯行とした。

 アメリカがこのような行動に走った訳は、1949年に中国で共産党が勝利して中華人民共和国を建国し、またたソ連は原爆の開発に成功、と、共産主義勢力の勢いが拡大していたためと考えた。アメリカは日本を反共の盾とするため、日本国内の共産主義勢力を叩く必要があったため事件を起こしたとした。

 ちなみにZ機関に関わった関係者は(当然)事件への関与を否定した。しかし近年機密が解除されたアメリカの政府資料によれば、当時のGHQや米陸軍は本国宛に

「日本人は下山事件共産主義勢力の犯行と考え始めているので、上手くいけば労組から共産主義勢力を一掃できる」「下山事件三鷹事件以降共産主義者の勢いが衰えた」

と報告している。


感想

 以前に放送した

【ドラマ】感想:NHK番組「未解決事件 松本清張帝銀事件 ディレクターズカット」(2023年2月25日(土)放送)
https://perry-r.hatenablog.com/entry/2023/03/01/212603

perry-r.hatenablog.com

 
 と連動した番組。


 松本清張は、帝銀事件ではGHQ731部隊に注目が集まらないように捜査を妨害した、と主張しましたが、いわゆる国鉄三大ミステリー「下山事件」「三鷹事件」「松川事件」では、さらに踏み込んで、GHQ・政府が国内の共産主義者の勢力を削ぐためにやった、と推理しています。

 この推理が、良い線をついているのか、はたまた単なる「陰謀論」なのか、はさっぱりわかりませんが、話として面白かったことは間違いないので、なかなか楽しい番組でした。


おまけ

 コメンテーターとして話を聞いているのが、作家・横山秀夫、ノンフィクション作家・保阪正康、までは解るのですが、何故か三人目がイラストレーターのみうらじゅん……、なんでやね~ん? 

 そして、みうらじゅんは、サングラス姿なのは昔と一緒ですが、ひげを蓄えてしかもそれが結構白くて、この人も歳食ったなぁ感が物凄かったっす。
 
 
新装版 日本の黒い霧 (上) (文春文庫)
新装版 日本の黒い霧 (下) (文春文庫)