笑わない数学 NHK https://www.nhk.jp/p/ts/Y5R676NK92/
放送 NHK総合。
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【※以下ネタバレ】
パンサー尾形が難解な知の世界を大真面目に解説?!
第4回「結び目理論」(2023年10月25日(水)放送)
内容
笑わない数学 第2シリーズ 結び目理論
[総合] 2023年10月25日 午後11:00 ~ 午後11:30 (30分)
パンサー尾形貴弘が数学の難問を大真面目に解説する「笑わない数学」。テーマは「結び目理論」。この宇宙の創造主は数学を知っている?ワクワクする数学ミステリー!
「結び目理論」とは「ひも」にできた結び目を分類する数学の一分野。様々な結び目をひもを切らずに変形していく場合、どうやっても一致させられない結び目は何種類あるのか? 数学者が頭の中で考え出した遊びのような研究は20世紀に大発展を遂げる。ところがその理論が宇宙法則と関係していたという意外な事実が! 数学は数学者の「発明」か?それとも人類とは無関係に宇宙に存在し、それを数学者が「発見」しただけなのか?
【司会】尾形貴弘
●結び目理論のはじまり
1870年代。原子の正体を探っていたイギリスの物理学者ウィリアム・トムソン(ケルビン卿)は「原子の正体は、端っこのない紐の結び目のようなものではないか?」という説を提唱した。その結び目の種類の違いが原子の違いなのでは? という説である。
トムソンの友人の数学者ピーター・テイトは、それに興味を持ち結び目を分類してみることにした。そして結び目のひもとひとが重なる部分「交点」に注目し、「交点の数が1個の結び目は何種類か?」「2個なら?」「3個なら?」という具合にしらみつぶしに調べていった。そして膨大な数を分類したが、交点数8個のところでついに力尽きてしまった。
1885年には数学者トーマス・カークマン(イギリス)が交点数10までのリストを作った。
●その結び目は同じものか?
ところで、結び目はごちゃごちゃしているので、二つの結び目が有るとして、それが違う物なのか同じものなのか即座に判断できない。そこで数学者たちは、結び目毎に一つしか無い指紋のような物「不変量」は無いかと調べ始めた。
1928年。数学者ジェームズ・アレクサンダー(アメリカ)は、結び目の指紋(不変量)となる「アレクサンダー多項式」を考案した。それは
1)結び目の交点に番号をつける
2)ひもが囲んでいる「領域」に番号をつける
3)ひもに「向き」をつける
4)ルールにしたがって表を埋め「行列」をつくる
5)行列式を計算する
という物で、これで結び目を区別できるようになった。
●果てしない不変量探し
ところがアレクサンダー多項式にも弱点があり、鏡に映したような形で対象な結び目は計算結果が同じになってしまい区別できなかった。
1984年。数学者ヴォーン・ジョーンズ(オーストラリア)は「ジョーンズ多項式」を考案し、これで鏡像の結び目も区別可能になった。この功績でジョーンズは1991年に数学のノーベル賞と言われるフィールズ賞を受賞した。しかし、ジョーンズ多項式も完全ではなく、明らかに別と解っている結び目を同じものとしてしまう弱点が見つかった。
数学者たちは究極の不変量探しにのめりこみ、ジョーンズ多項式の発見から数ヶ月後、八人の数学者たちが「HOMFLY(ホンフリー)PT多項式」を発見し、さらに1993年にはマキシム・コンツェビッチが「コンツェビッチ不変量」を発見。しかし数学者たちはさらなる不変量を探し求めている。
●何故結び目を研究しているのか?
ところで今では原子の正体が結び目と関係ないことは判明しているのに、結び目を研究して何か意味があるのか? 特に意味もない、単なる数学者のゲームのようなものでは?
ところが20世紀末に理論物理学者エドワード・ウィッテン(アメリカ)が発表した論文には、自然法則と結び目理論が関係している事が書かれていた。数学者がゲーム的に研究していた結び目理論は、実は宇宙誕生当時から自然法則に組み込まれていたかもしれない、と解ったのである。
数学は人間が頭のなかで作り出した発明か? それとも人間とは関係なく大昔から存在していたものを人間がたまたま発見したものなのか? 大いなる謎である。