【映画】感想:映画「戦場」(1949年:アメリカ)

戦場 [DVD]

NHK BSシネマ http://www.nhk.or.jp/bscinema/
放送 NHK BSプレミアム 2020年7月22日(水)

【※以下ネタバレ】
 

1944年のベルギー戦線を舞台に、ドイツ軍の攻撃に耐えながら反攻する兵士たちを、名匠ウィリアム・A・ウェルマン監督が描く戦争ドラマ。アカデミー脚本、撮影賞受賞。


1944年12月。ドイツ軍のアルデンヌ攻勢が始まり、アメリカ軍第101空挺師団にベルギーへの出動命令が下る。第3小隊のホリーたちは、バストーニュの町で一夜を明かし、霧深い森に布陣する…。第2次大戦末期、劣勢のドイツ軍が反撃に転じたバルジの戦いで、包囲されながら陣地を死守する兵士たちを、名匠ウィリアム・A・ウェルマン監督が、さまざまなエピソードを織り交ぜて描く戦争ドラマ。アカデミー脚本、撮影賞受賞。

 

あらすじ

 第二次大戦末期の1944年12月。アメリカ陸軍第101空挺師団は、ドイツ軍の反撃に対応するためフランスからベルギーに移動し、第三小隊はバストーニュの町の近くの森に布陣した。

 降雪や霧といった悪天候の中、第三小隊はドイツ軍との果てしない戦いを続けるが、兵士たちは次々と戦死していった。兵士たちはバストーニュがドイツ軍に包囲されたと知り動揺するものの、ドイツ軍からの降伏勧告を無視し粘り強く戦い続ける。

 それでも弾薬などが底をつき、ついに退却を覚悟した時、奇跡的に天候が回復し、すぐさま空軍は輸送機で食料・弾薬・燃料を投下して兵士たちに届ける一方、地上のドイツ軍を次々と駆逐していった。

 そして戦いはアメリカ側の勝利に終わり、休息を与えられた第三小隊は後方へと行進していった。


感想

 評価は○。

 第二次大戦の最前線の陸軍兵士たちを描いた群像劇。派手な戦闘シーンやヒーロー物的な劇的なエピソードは無く、淡々と前線の兵士たちの戦いを描いた作品ですが、これが無性に面白かった。

 特定の主人公はおらず、「第三小隊」というグループの中の10人前後の兵士たちの戦いに焦点を当てた物語ですが、話には山も谷も無く、兵士たちがただ「移動する」「地面に穴を掘る」「敵の砲撃にさらされる」「ドイツ兵に遭遇して撃ちまくる」という日々を延々と繰り返すだけ。上官も、軍の上層部も登場せず、ひたすら最前線の兵士たちの目線で物語が進行します。

 兵士たちは、今自分たちが一体どこの国のどの辺りにいて、戦況はどうなっているのか、といったことは一切解らないまま、ただひたすら戦い続けるだけ。しかも戦友は劇的なエピソードも無いまま、くしの歯が欠けるように次々と戦死していきます。

 と、これだけだと、物凄く悲壮で辛い映画のように思えるのですが、実のところそういった感情を喚起する要素は無く、砲撃も戦闘も戦友の死も「兵士たちのきつい日常の中の一エピソード」として通り過ぎて行くだけですので、ある意味こちらも淡々と視聴できました。

 唯一、盛り上がると言うか派手なシーンは、ドイツ軍の降伏勧告の使者から「司令官に降伏を拒否された。理解できない」と言われると、兵士の一人が「バカ野郎」と言うシーン。これ、史実では第101空挺師団の指揮官がドイツ軍から降伏勧告に「Nuts!(バカ野郎)」と返事をしたのですが、映画では前線の兵士にその役目を割り振っています。

 最後は天候の回復とともに、空軍が山のように飛来し、ドイツ軍を蹴散らして一つの区切りがつき、休息をもらった(らしい)兵士たちが歌いながら後方に向けて行進していく、明るいシーンで終わります。それまでが見ていて辛い出来事ばっかりなので、最後はこちらも明るい気持ちになれました。

 今までに見てきた戦争映画とは一味違うタイプの作品で、妙に印象に残りました。派手な内容では無かったものの、後味はなかなかでした。 
 

戦場
[BSプレミアム]2020年7月22日(水) 午後1:00~午後3:00(120分)


【製作】
ドア・シャリー
【監督】
ウィリアム・A・ウェルマン
【原案・脚本】
ロバート・ピロッシュ
【撮影】
ポール・C・ヴォーゲル
【音楽】
レニー・ヘイトン
【出演】
ヴァン・ジョンソン、ジョン・ホディアク、リカルド・モンタルバン ほか


製作国:
アメリ
製作年:
1949
原題:
BATTLEGROUND
備考:
英語/字幕スーパー/白黒/スタンダード・サイズ

 
 

2020年視聴映画のあらすじ・感想の一覧は以下のページでどうぞ

2020年視聴映画あらすじ・感想一覧

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戦争映画パーフェクトコレクション 戦場 DVD10枚組 ACC-023
 
 
 

【映画】感想:映画「ジュラシック・ワールド/炎の王国」(2018年:アメリカ)

ジュラシック・ワールド/炎の王国 [Blu-ray]

金曜ロードシネマクラブ|日本テレビ https://kinro.ntv.co.jp/
放送 日本テレビ系。2020年7月24日(金)

【※以下ネタバレ】
 

夏だ!映画だ!恐竜だ!
シリーズ最新作が地上波初放送!


シリーズ最多!恐竜オンパレード!
さらに遺伝子操作により新種の恐竜誕生!


スティーヴン・スピルバーグ監督が手掛けた映画史にその名を刻む大ヒット映画「ジュラシック・パーク」シリーズの最新作が、地上波初放送!遺伝子操作で生みだされた恐竜が暴走した「ジュラシック・ワールド」の事件から3年。恐竜たちが自由に暮らしていた島の火山が噴火し、恐竜を別の島に移す計画が立てられた。しかし、その陰では大きな陰謀が渦巻いていて…! 様々な年代を代表する恐竜たちに加えて、遺伝子操作で生み出された新恐竜など、シリーズ史上最多の恐竜が画面狭しと走り回る! 恐竜を守るため奮闘する主人公とヒロインたちと、陰謀を察知してしまった少女を巡るスリリングなストーリー展開からも目が離せない。夏にピッタリのアドベンチャームービーだ!

 

あらすじ

 テーマパーク「ジュラシック・ワールド」で恐竜が暴走した事件から3年後。パークがあった島は、今は野生の恐竜が闊歩する状態となっていたが、島で火山活動が活発になり、恐竜たちが死滅する恐れが高まった。

 ジュラシック・ワールドの元重役で、今は恐竜保護団体を率いているクレアは、ジュラシック・ワールドの前身「ジュラシック・パーク」に関わった大富豪ロックウッドから恐竜保護の協力を取り付けることに成功した。クレアは、ロックウッドの腹心イーライから、恐竜たちを救い出し、別の無人島へと移住させる計画を教えられる。

 イーライの計画には「ヴェロキラプトル」の「ブルー」の保護が入っていたため、クレアはかつてジュラシック・ワールドでブルーを調教していた元恋人オーウェンを計画に引き入れ、恐竜たちの島へと向かった。

 現地ではイーライの雇った傭兵軍団が次々と恐竜たちを捕まえていたが、彼らはブルーを捕獲すると、恐竜を満載した船に乗り込み、オーウェンたちを置き去りにして島から脱出し始めた。慌ててオーウェンたちは船に忍び込むが、着いた先は無人島ではなくロックウッドの屋敷だった。

 実はイーライは、恐竜の保護など考えてもおらず、捕まえた恐竜を兵器やコレクションとして欲しがる人間たちに競売で売りさばこうとしていた。それに気が付いたロックウッドだったが、開き直ったイーライによって殺害されてしまう。

 さらにイーライたちは、恐竜を兵器として売るため、「ヴェロキラプトル」と、ジュラシック・ワールドで3年前に作られていた新種「インドミナス・レックス」とを組み合わせた究極肉食恐竜「インドミナス・ラプトル(インドラプトル)」も誕生させていた。

 オーウェンたちはイーライ一味に捕まるもののすぐさま逃走し暴れまわったため、競売会場は大混乱となる。インドラプトルも逃走して殺戮を繰り広げるが、ブルーによって殺された。クレアたちは屋敷に毒ガスが充満したため、恐竜たちを助けるため檻から解き放ち、恐竜たちはすぐに姿を消した。最後。逃走した恐竜たちが陸海空で自然に暮らしているシーンで〆。


感想

 評価は△(バカ映画)

 いやー、これは酷過ぎる…… 2015年公開の「ジュラシック・ワールド」の続編ですが、前作からして評価は辛かったのですが、こっちに至ってはもうダメダメとしか言いようがありません。

 前作から既に「遺伝子操作で新しい恐竜を作ったが逃げられた→よし、恐竜には恐竜だ! Tレックスをぶつけてやれ→恐竜大戦争」という知能指数低めのバカ系映画だったのですが、今回はもうヒーロー映画と化しており、『恐竜を捕まえて売りさばこうとする悪い連中は、正義の味方の俺たちが絶対に許さない!』みたいな内容になっており、もうなんなんだよ感満載。


 前作では目玉として超強力新型恐竜「インドミナス・レックス」が登場しましたが、よしそれなら今度はもっと強いのを出してやる、そうだ、インドミナスとラプトルを合体させれば最強だ!→「インドミナス・ラプトル」爆誕!とか、もう悪の怪人を次々と開発する秘密結社みたいなノリだし。


 今回「今後は人間は恐竜と共存することになる……」みたいなことを言っていましたが、それを言い出したら以前からでも恐竜は孤島で野放し状態でその気になればどこへでも行けたやん、としか言いようがなくて。


 何つーか、作れば作るほどダメになっていく感じ有りますよ、このジュラシックシリーズ。
 
 

https://kinro.ntv.co.jp/lineup/20200724
2020.7.24 よる9時~11時24分放送
ジュラシック・ワールド/炎の王国
2018年制作 アメリカ・スペイン映画 字幕 二か国語 地上波初放送 30分拡大


ストーリー
火山の噴火で絶滅の危機にさらされた恐竜たち
人間は恐竜を救うべきなのか?それとも…?


現代に蘇った恐竜を展示するテーマパーク「ジュラシック・ワールド」で、遺伝子操作で生み出された恐竜、インドミナス・レックスが暴走した惨劇から3年。テーマパークがあった島では、自由に恐竜たちが暮らしていた。そんな中、島の火山活動が活発化。恐竜の保護が叫ばれる中、何者かが島からインドミナス・レックスの骨を盗み出していった。 テーマパークの元責任者で、恐竜保護団体を設立したクレア(ブライス・ダラス・ハワード)は、「ジュラシック・パーク」の生みの親のビジネスパートナーだったベンジャミン(ジェームズ・クロムウェル)に協力を仰ぐことに。ベンジャミンの下で働くイーライ(レイフ・スポール)は、恐竜を安全な島に移送すると約束。


高い知能を持つヴェロキラプトルのブルーの保護を条件に出されたクレアは、ブルーを調教していた元恋人のオーウェンクリス・プラット)と共に島に向かったが、イーライが手配した傭兵に裏切られてしまう。 イーライの目的は、恐竜を兵器として各国に売りさばくこと。高い攻撃力を持つインドミナス・レックスを、人間に従順な“兵器”に作り変えるためには、ブルーのDNAが必要だったのだ。襲いかかる恐竜たちと、降り注ぐ溶岩からなんとか逃げ出したクレアとオーウェンだったが、イーライに捕らえられてしまう。一方、孫娘のメイジー(イザベラ・サーモン)からイーライの企みを知らされたベンジャミンは、彼を止めようとするが…!



キャスト/スタッフ
出演
オーウェン・グレイディ> クリス・プラット(玉木 宏)
<クレア・ディアリング> ブライス・ダラス・ハワード木村佳乃
<イーライ・ミルズ> レイフ・スポール(内田夕夜
<フランクリン・ウェブ> ジャスティス・スミス満島真之介
<ジア・ロドリゲス> ダニエラ・ピネダ(石川由依
<ベンジャミン・ロックウッド> ジェームズ・クロムウェル中田譲治
エヴァーソル> トビー・ジョーンズ高木渉
<ケン・ウィートリー> テッド・レヴィン黒田崇矢
<イアン・マルコム> ジェフ・ゴールドブラム大塚芳忠
<ウー博士> B・D・ウォン(近藤浩徳)
<アイリス> ジェラルディン・チャップリン池田昌子
<メイジー・ロックウッド> イザベラ・サーモン(住田萌乃)



スタッフ
<監督> J・A・バヨナ
<脚本> デレク・コノリー&コリン・トレボロ
<製作総指揮> スティーヴン・スピルバーグ コリン・トレボロ
<音楽> マイケル・ジアッキノ
ジュラシック・パークテーマ曲> ジョン・ウィリアムズ

 
 

2020年視聴映画のあらすじ・感想の一覧は以下のページでどうぞ

2020年視聴映画あらすじ・感想一覧

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ジュラシック・ワールド [Blu-ray]
 
 
 

感想:海外ドラマ「刑事コロンボ」第17話「二つの顔」

刑事コロンボ完全版 1 バリューパック [DVD]

刑事コロンボNHK BSプレミアム BS4K 海外ドラマ https://www9.nhk.or.jp/kaigai/columbo/
放送 NHK BSプレミアム

【※以下ネタバレ】
 

他の回の内容・感想は以下のリンクからどうぞ

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第17話 二つの顔 DOUBLE SHOCK (第2シーズン(1972~1973)・第8話)

 

あらすじ

刑事コロンボ』旧シリーズ一挙放送!結婚式前日に遺体となって発見された富豪。遺産相続人の双子の甥(おい)に容疑がかかるが…。


孫のように若いリサとの結婚式を控えた富豪パリスの遺体が発見された。入浴中、電源を入れたままのミキサーを放り込まれ感電死したのだ。彼の死は心臓麻痺によるものと判断されかけるが、コロンボは殺人とみて、遺産相続人である双子の甥(おい)に目をつける。仲が悪く、お互いに罪をなすりつけあう双子兄弟のうち、どちらが真犯人なのか!?

●序盤

 大富豪クリフォード・パリスは、孫ほども年の離れたリサ・チェンバースとの結婚を翌日に控え、甥の一人デクスター・パリスから祝福を受けていた。夜。一度帰ったはずのデクスターが入浴中のクリフォードの前に現れ、浴槽に電動ミキサーを放り込んで感電死させる。

 そのあとリサがパリス邸を訪問し、クリフォードが地下のトレーニングルームでエアバイクにまたがったまま死んでいるのを発見する。



●中盤

 パリス邸に警察が調査に訪れ、コロンボは浴室に濡れたバスタオルが有ったことから、故クリフォードが一度入浴したあと、またトレーニングを始めていたことに疑問を抱く。屋敷の窓の外には偏平足の足跡が残っていたが、デクスターは自分を疑っているらしいコロンボに、自分も偏平足だと挑発する。そこにデクスターの兄ノーマンがやってくるが、ノーマンとデクスターは一卵性の双子でそっくりの容姿をしており、さらにノーマンも偏平足だった。

 ノーマンとデクスターは仲が悪く、ノーマンはコロンボに弟デクスターが怪しいとあからさまに匂わせ、一方自分は銀行員なので金目当てに人を殺すくらいなら銀行から横領する方が早いと言ってのける。

 続いてコロンボはデクスターを訪問し、故クリフォードが感電で殺されたことが判明したと伝えたうえで、ノーマンと会ったことを伝える。するとデクスターは、コロンボをわざわざラスベガスに連れて行き、ノーマンがギャンブル狂いで三万ドルもの借金を背負っていることを教える。

 コロンボはパリス邸の家政婦ペック夫人から、事件当夜停電があったものの、すぐ電気が元に戻ったという証言を得る。

 故クリフォードの弁護士でビジネスマネージャーでもあったハサウェイは、双子にこっそり遺言の内容を明かすが、その内容は、リサがクリフォードと結婚するしないに関わらず、クリフォードの遺産はリサに贈られるというものだった。つまり結婚前にクリフォードが死んでも、双子は遺産は相続できない。

 ところがクリフォードは、自分を双子の弁護士・ビジネスマネージャーとして引き続き雇うなら、遺言状を無かったことにすると持ち掛ける。そして遺言状の写しを持つリサに連絡し、リサが殺人容疑で警察に疑われているので、疑われないように遺言状を手放すようにと言って承諾を得る。

 ところがハサウェイがリサのマンションに行くと、リサはベランダから転落して死んでおり、ハサウェイは殺人の容疑者として警察に拘束されてしまう。コロンボはデクスターに、ハサウェイがデクスターをリサ殺しの犯人と名指ししていることを伝えるが、当然デクスターは否認する。



●終盤

 コロンボはノーマンとデクスターをパリス邸に呼び、まず風呂に入っている人間を一人で運び出すのは難しいことを確認させた後、風呂場から地下のヒューズボックスまでは急いでも67秒かかることを示す。しかし事件当夜の電源が切れていたのは20秒程度だった。

 コロンボは、一人がクリフォードを殺し、もう一人は地下のヒューズボックスで待機していてすぐに電気を入れた、つまり二人の人間が協力して行った犯行だと指摘する。コロンボの考えでは、当日、デクスターは屋敷から出ていったと見せかけて実際にはノーマンが立ち去り、屋敷に潜んでいたデクスターが警報装置を切ってノーマンを招き入れ、犯行に及んだのだった。二人は仲が悪くロクに連絡をしない仲の筈だったが、電話の記録を調べると二人は最近10日間に20回以上も連絡を取り合っていた。

 観念したノーマンはすぐに白状し、双子は警察に連行されていった。


監督 ロバート・バトラー
脚本 スティーブン・ボッコ(原案:ジャクソン・ギリス&リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク)


感想

 評価は△(いまいち)。

 序盤はいつもの倒叙形式のストーリーと思わせて、途中からいきなり犯人当て形式に転じて視聴者を驚かせるトリッキーなエピソード。序盤~中盤はかなり面白いのだが、幕引きが上手く出来ておらず、最終的には拍子抜けの結末となってしまう惜しい作品だった。


 サブタイトルの原題は「DOUBLE SHOCK」で、「二重の衝撃」といった意味だが、あまりピンとこない。その点日本語版の「二つの顔」は秀逸で、「序盤に登場した殺人者の顔は、双子の内のどちらの顔なのか」といった、番組内容を想起させる素晴らしい物だと思う。


 このエピソードは、序盤はいつものコロンボのスタイルで話が進み、視聴者はデクスターが犯人だと思って視聴しているのだが、30分前後にそれまで名前だけ出ていたデクスターの兄ノーマンが登場し、二人がそっくりの容姿の双子である事を明かして視聴者を驚かせる、という構成は実に面白い。

 この時から物語は「倒叙」から「犯人当て」へとのガラリと姿を変え、視聴者はどちらが犯人なのかとコロンボと共に手掛かりを追っていくことになる。しかも全74分の作品なのに、60分過ぎにリサがベランダから転落して死ぬという展開まで加わり、事件はますます混沌としてくる。ここまでの謎が謎を呼ぶ展開は実に楽しかった。

 当然、残り15分でコロンボがこのもつれにもつれた事件をいかに切れ味良く解決するのか、という点に期待していたのだが、しかしコロンボはクリフォード殺しが一人では不可能であることを状況証拠で納得させて双子の犯行だと突き止めただけで話は終わってしまう。

 つまり「リサは何故コロンボとの対応時にイライラしていたのか?」「リサを殺したのは誰か(ノーマン? デクスター?)」「そもそもリサが殺された理由は何だったのか?」といった謎は未解決のまま投げ出されてしまったので、期待していた分失望も大きかった。

 このエピソードの脚本担当は「構想の死角」などを書いたスティーブン・ボッコだが、原案として「ジャクソン・ギリス&リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク」の三人が名前を連ねており、つまり計四人で書いたにも拘わらずこの出来栄えなのは正直がっかりだった。本作をもって第2シーズンは幕を閉じたのだが、最後の最後にこれでは、有終の美という言葉とは程遠かった感がある。

 結局のところ、斬新な構成を試みた意欲的な作品だったが、悲しいかな上手く行かなかった、ということで評価は今一つである。


 とはいえ、理屈抜きに面白いと感じる場面もあり、コロンボ料理研究家のデクスターによって、生中継のテレビの料理ショーに手伝いとして引っ張り出される辺りはなかなかに楽しめた。やっていることは、コロンボが生卵を割って黄身だけを取り出して塩コショウしてミキサーに入れ、ついでにレモンジュースと溶かしバターを入れて混ぜるだけ、と、ほとんど料理ともいえないものだったが、コロンボのあたふたぶりが愉快だった。ちなみにこの料理シーンは全編アドリブで収録されたそうである。


 コロンボは、無作法な行動で捜査に関わった事件関係者の眉をひそめさせる事が多いが、本作ではパリス邸の家政婦ペック夫人に徹底的に嫌われてしまい、ヒステリーを起こすペック夫人の姿にはいささかイライラさせられた。まあ当事者からすれば、葉巻の灰を床に落とされるわ、高価な瓶は割られるは、皿を灰皿代わりにされるわ、といらつくことばかりだったのかもしれない。とはいえ、ペック夫人は賑やかしのためだけにいたわけでなく、彼女の停電に関する証言が事件解決の鍵になっていた。


 犯人役のノーマンとデクスターを演じたマーティン・ランドーは、テレビドラマ「スパイ大作戦」のローラン・ハンド役で有名。


備考

 放送時間:1時間14分。
 
 

#17 二つの顔 DOUBLE SHOCK
日本初回放送:1973年


倒叙形式を守ったまま犯人当てを成立させる」という離れ業が素晴らしい。映画『エド・ウッド』でアカデミー賞を受賞したマーティン・ランドーが双子を演じる。中盤で「料理番組にコロンボが出演する」というコミカルなシーンも楽しい。


出演
コロンボ・・・ピーター・フォーク小池朝雄
デクスター/ノーマン・・・マーティン・ランドー(滝田裕介)
ペック夫人・・・ジャネット・ノーラン(文野朋子)
ハサウェイ・・・ティム・オコナー(保科三良)
リサ・・・ジュリー・ニューマー(清水良英
クリフォード・・・ポール・スチュワート(杉田俊也)


演出
ロバート・バトラー


脚本
ティーブン・ボッコ

 

他の回の内容・感想は以下のリンクからどうぞ

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刑事コロンボ完全版 3 バリューパック [DVD]
刑事コロンボ完全版 4 バリューパック [DVD]
刑事コロンボ完全捜査ブック
 
 
 
 

【ゲームブック】感想:ゲームブック「ゲームブック ぼうけん!おばけのもり」(水本シズオ/2020年)【クリア済】

リス: 住まい、食べ物、接し方、病気のことがすぐわかる! (小動物 飼い方上手になれる!)

ゲームブック ぼうけん!おばけのもり
https://onkoya.booth.pm/items/2138997

【※以下ネタバレ】
 

りすの りっくんが 「おうごんの どんぐり」を さがしに 「おばけの もり」へ でかけたよ。
さあ きみも りっくんと いっしょに ぼうけんしよう!


A5サイズ62ページ/総パラグラフ数55/2020.7.17発行


子ども向け(対象年齢5歳以上)の、絵本風ゲームブック
クイズやなぞなぞをときながら、ゴールを目指します。
筆記具・サイコロ不要。

 

概要

 子ども向け(対象年齢5歳以上)の絵本風味のゲームブック

あらすじ

 りすの「りっくん」は「おうごんのどんぐり」を探すため「おばけのもり」にやって来たぞ。読者はりっくんがおうごんのどんぐりが手に入るように助けてあげよう。

ゲームシステムなど

 パラグラフ数は55。「パラメーター」「サイコロ振り」「アイテム使用」といった概念は無し。

 基本的に絵本で、1ページ=1パラグラフ。選択肢は、オーソドックスに「□□と△△があるぞ、□□にいくなら[XX]へすすむ。△△にいくなら[**]へすすむ。」という自由選択型と、クイズが出題され「こたえはどっちかな? ○○なら[XX]へすすむ。◇◇なら[**]へすすむ。」という明確に正解・不正解があるタイプの二種類。

 クイズで不正解になっても(当然)キャラクターが無惨に死んだりはせず、少し前のパラグラフ番号に戻ってやり直すように指示されるだけ。選択肢も少ないのでメモを取らなくても簡単にクリア可能。

感想

 評価は○。プレイ時間:約10分。

 この作品は、作者の水本シズオさんのブログで存在を知り
 ↓

2020-07-04
新作ゲームブック販売開始(PDF版は期間限定で無料) - ゲームブック 温故屋
https://onkoya.hatenablog.jp/entry/2020/07/04/012854

onkoya.hatenablog.jp

新作『ゲームブック ぼうけん! おばけのもり』が、BOOTHで販売開始となりました。今回のゲームブックは、対象年齢を5歳以上に想定した、子ども向けです。PDF版は期間限定で無料にしていますので、ダウンロードして遊んでいただけると嬉しいです。

 
 期間限定で無料ということで早速PDFファイルをダウンロードして遊ばせてもらいました。

 子供向けなのだから、なぞなぞはめちゃくちゃ簡単……、かと油断していたら「○○にはあってXXにはない。□□にはあって◇◇にはない」系のなぞなぞでは、真剣に考えても答えが解らなくて「えっ?」と思ってしまいました(笑) いやまいった(笑)

 また、途中で出会うキャラクターが「○○とであったら□□するんだ」的なヒントをくれて、それをしっかり憶えていないと後々で問題になったり(という程でも無いですけど)、と、簡単な中にも「本格ゲームブックのエッセンス」というものが感じられて嬉しい作りとなっていました。
 
 さすがに大人の読者には「やりごたえがある」というわけにはいきませんでしたが、童心に帰ってというか、そういう感覚で楽しくプレイできました(笑) 肩の凝らないこういう作品も良いもんですね。
 
 
にゃんたんのゲームブック (ポプラ社の小さな童話)
 
 

【ウォーゲーム】今年も来ました「歴史群像2020年8月号」付録ウォーゲーム「ノルマンディーの戦い」「米軍空挺部隊の戦い」

歴史群像 2020年 08 月号 [雑誌]

歴史群像―デジタル歴史館-「雑誌 歴史群像
http://rekigun.net/magazine/index.html

歴史群像 No.162
2020年8月号
7月6日発売!
特別定価:本体1,100円+税

■ 豪華別冊付録

史上最大の作戦”ノルマンディー上陸作戦をテーマとした本誌特製の本格的ボードゲーム2点(表・裏)つき!
表 ノルマンディーの戦い
裏 米軍空挺部隊の戦い


内容物)
1)サイコロ・シート(おもて紙)
2)ゲームマップ1枚(約50センチ×65センチ・両面印刷)
3)コマ・シート(打ち抜き)
4)ルールブック(32頁冊子)

 
◎表面「ノルマンディーの戦い」(2人用)
1944年6月6日に開始され、第二次世界大戦西部戦線のターニングポイントとなった連合軍のノルマンディー上陸作戦を師団規模で再現する2人用ゲーム。プレイヤーは連合軍の総司令官、あるいはドイツ軍のノルマンディー防衛を担う第7軍司令官となって、Dデイ=6月6日から12日までの1週間にわたるノルマンディー海岸の戦いで勝者となることを目指します。


◎裏面「米軍空挺部隊の戦い」(1人用)
1944年6月6日から7日にかけてノルマンディー上陸作戦の一環として行われたアメリカ軍空挺部隊(第82および第101空挺師団)のパラシュート/グライダー降下作戦と、ユタ・ビーチから上陸した米第4歩兵師団による海岸堡確立作戦を再現する1人用ゲームです。

 
 戦争系の歴史を扱う「歴史群像」誌は、2018年から年一回の夏の付録としてウォーゲームを付けるようになったのですが、今年もまたまた「豪華付録」が付きました。これが無いと夏が来た気がしませんなぁ。

 ちなみに、本誌内にも、デザイナー山崎氏から「プレイのヒント」があります。
 
●2018年8月号
perry-r.hatenablog.com
●2019年8月号
perry-r.hatenablog.com
 
ノルマンディー戦車戦―タンクバトル〈5〉 (光人社NF文庫)
 
 

【ゲームブック】芥川賞作家の書いたゲームブックですと?!「真夜中をさまようゲームブック」

サキの忘れ物

2020-07-24
「真夜中をさまようゲームブック」(『サキの忘れ物』より) - ゲームブック 温故屋
https://onkoya.hatenablog.jp/entry/2020/07/24/001541

onkoya.hatenablog.jp

本日のゲームブックは、芥川賞作家・津村記久子さんの「真夜中をさまようゲームブック」。
今年6月に発売された『サキの忘れ物』に収録されている作品です。
(初出は「美術手帖」2015年10月号)

主人公は、ゲームブックでおなじみの「君」。性別や年齢もあえてあいまいにされています。パラグラフ数は62と多くはありませんが、ひとつひとつのパラグラフの文章が、(一般的なゲームブックにしては)長めなので、全体として短いという印象は受けませんでした。

お酒をのんで帰ってきたら鍵がなくて、家に入れない。さて、どうしようというところからスタート。

 
 はいはいはい、思い出した。確か昔「こんな雑誌にゲームブックが!?」と話題になったのですが、高くて買うのを躊躇したままだったんでした。


 今調べたら、

・サキの忘れ物 1540円
・「美術手帖」2015年10月号 2980円

 うん、小説版買った方が安いわ。少し様子を見て値崩れしてから買おう。
 
 
 
美術手帖 2015年 10月号
 

【FGO】『なぜ『FGO』はここまで大ヒットになったのか?』【全てきのこのおかげ】

逆光(FGO盤)

2020年7月21日 11:45
なぜ『FGO』はここまで大ヒットになったのか? ──『FGO』がソーシャルゲーム界の”特異点”となった3つの根拠
https://news.denfaminicogamer.jp/kikakuthetower/200721a

news.denfaminicogamer.jp

2015年のリリース以来、ソーシャルゲーム界のトップランナーであり続ける『FGO』。どうしてここまでヒットしたのでしょうか?

 
 もうクソクソクソ(以下好きなだけ繰り返す)ヒットしているFGO。何がどうしてこんなに売れているのか、業界関係者が分析するというのだから、興味わきますよね? でもその内容は……
 
 

1.『FGO』はソーシャルゲームではなく、「ストーリーゲーム定期配信プラットフォーム」
2.2010年代のソーシャルゲーム市場には「展開する物語」の供給が途絶えており、『FGO』はその需要に応えた
3.『Fate』シリーズが「劇的な展開」や「熱い展開」を何度も読ませる物語だったため、『FGO』もまたその物語構造を受け継いでいた

 
 
 なんのことはない「三つの理由」とか分けつつ、「話が面白いから」という事を言葉を変えているだけでした。なんじゃそりゃ。

 しかも最後にこう来てます。

とはいえ、本稿で分析したヒットの理由の多くは、いわば構造的な側面からにとどまる。おそらくこれだけの理由だと、なぜ多くの『FGO』フォロワーが成功できなかったのか、という問題についてうまく説明できないだろう。


 実際、フォロワー作品のみならず『FGO』のパブリッシャーであるアニプレックス自身が『FGO』を再現しようと試みた作品もいくつか見られる。しかし、それらの作品でさえ『FGO』レベルのヒットには至っていない。それはどうしてなのだろうか。


 身もふたもないような話で申し訳ないのだが、私の考えではその理由は『FGO』ならびに『Fate』シリーズの物語性の魅力そのものにある。

 
 ……、だったら最初から「奈須きのこが凄い才能だからFGO大ヒット」が理由で良いんじゃなね? 他のゲームには奈須きのこが関わっていないからFGOほどヒットしない。ハイ、スッキリ説明できた。
 
 
figma Fate/Grand Order シールダー/マシュ・キリエライト ノンスケール ABS&PVC製 塗装済み可動フィギュア
 
 

【SF小説】感想「マイナス宇宙へ」(宇宙英雄ローダン・シリーズ 617巻)(2020年5月26日発売)

マイナス宇宙へ (宇宙英雄ローダン・シリーズ617)

http://www.amazon.co.jp/dp/4150122822
マイナス宇宙へ (宇宙英雄ローダン・シリーズ617) (日本語) 文庫 2020/5/26
クルト・マール (著), エルンスト・ヴルチェク (著), 増田 久美子 (翻訳)
文庫: 271ページ
出版社: 早川書房 (2020/5/26)
発売日: 2020/5/26

【※以下ネタバレ】
 

科学者が冷気生物をマイナス宇宙へ戻す方法を探るなか、エラートたちは惑星チョルトを支配する仮面エレメントの拠点を攻撃した!


カッツェンカットは冷気生物たちを操る目的で、かれらの指導者トルムセン・ヴァリーに化けた仮面エレメントを惑星チョルトに送りこんだ。ヴァリーは十戒の陰謀を暴くため、自分がじかに冷気生物たちに呼びかけると決意する。ほんものの指導者だけが持つカリスマ的オーラのおかげで、かれらはしだいに真実に気づきはじめた。こうしてヴァリーはヴィールス人間エルンスト・エラートとともにふたたびチョルトを掌握するが?

 

あらすじ

◇1233話 マイナス宇宙へ(クルト・マール)(訳者:増田 久美子)

 惑星チョルトでは、エラートたちはがチョルト奪還を目指していたが成果は上がらず、やがてエラートもサイコフロストの影響で無気力化してしまう。ローダンは冷気生物たちをマイナス宇宙に送り返すため、艦隊をチョルトに向かわせ、カッツェンカットはその動きを察して、冷気艦隊を惑星ガタスから撤退させチョルト防衛に配置した。惑星チョルトと冷気艦隊はセルフィル=ファタロ装置の放射によってマイナス宇宙に消えた。無限アルマダは遂にガタス近傍に到着し、クロノフォシル・イーストサイドが活性化され、ブルー族は感情を持つ種族へと進化した。(時期:~NGZ428年11月30日)

※初出キーワード=なし



◇1234話 海賊放送局アケローン(エルンスト・ヴルチェク)(訳者:増田 久美子)

 地球では、無限アルマダが太陽系に来訪するのか否か、クロノフォシル活性化が人類に何をもたらすのか、が大きな話題となっていた。同じ頃、謎めいた「海賊放送局アケローン」が出現し、「警告者」が人類に向けて不気味な未来予測について放送を開始した。エラートは挙動不審のヴィールスインペリウムについて調査するため、内部へと消えた。地球に来たヴィシュナとゲシールは、行方不明だったスリマヴォを見つけ出し、三姉妹が揃ったことで彼女たちは力を取り戻し、無限アルマダが太陽系へやってくることを通達した。(時期:NGZ428年12月1日~)

※初出キーワード=海賊放送局アケローン、警告者


あとがきにかえて

 今年(2020年)「緊急事態宣言」が発令されたという話。


感想

 前半エピソード … 冷気生物編最終回。チョルトにやって来たヴァリーがやる気を失ったり、エラートがサイコフロストで無気力になったり、という展開になってしまい、彼らが元気よくチョルトに来た理由は何だったのか……、と困惑する展開もありましたが、とりあえず冷気生物たちを本来の宇宙に送り返すことで強引に一件落着。全く了承とか得ずにいきなりの転送でしたが、まあ故郷に返してあげたからその辺りは気にするべきでは無いのか。

 転送の際に美人科学者イリング・リースが犠牲になってしまいましたが、個人的なエピソードがまるで無かったので全然感動とか悲しみとか無かったのがイマイチ。あと、放射の影響でセルフィル=ファタロ装置が消えてしまいましたが、フィクティブ転送機と同じパターンだなぁという感じ。便利な(便利過ぎる)機械はすぐ壊れて二度と使えなくなる……


 後半エピソード … 舞台はいよいよ地球に移っての新展開。謎の少女アイリスの正体がスリマヴォというのは見え見えでしたが、彼女がゲシールとの対決に負けたとかいう話は、多分宇宙ハンザサイクルのどこかにあった気がしますが、もう記憶の彼方でした……

 現在(NGZ428年)の地球には超コンピューター・ヴィールスインペリウムの端末が街角に有って簡単にアクセスできるようですが、予想通り一般大衆はわりとくだらない用途でしか使ってないみたいです(笑)
 
 

600巻~650巻(「クロノフォシル」サイクル)の他の巻の内容・感想は以下へどうぞ

perry-r.hatenablog.com
 

2020年の読書の感想の一覧は以下のページでどうぞ

perry-r.hatenablog.com