【SF小説】感想「ウパニシャドの修行」(宇宙英雄ローダン・シリーズ 637巻)(2021年3月17日発売)

ウパニシャドの修行 (ハヤカワ文庫 SF ロ 1-637 宇宙英雄ローダン・シリーズ 637)

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ウパニシャドの修行 (ハヤカワ文庫 SF ロ 1-637 宇宙英雄ローダン・シリーズ 637) 文庫 2021/3/17
H・G・エーヴェルス (著), H・G・フランシス (著), 赤根 洋子 (翻訳), 星谷 馨 (翻訳)
出版社 : 早川書房 (2021/3/17)
発売日 : 2021/3/17
文庫 : 286ページ

【※以下ネタバレ】
 

英雄学校ウパニシャッドに試験的に入学することを許されたティフラーは候無事補生となるが銀河評議会の事件に巻き込まれてしまう


力の集合体エスタルトゥからの使者ストーカーは、エスタルトゥ諸種族の教え“ウパニシャド”を学ぶ銀河系初の学校をエベレスト山の頂上に創設した。英雄学校チョモランマだ。自由テラナー連盟の首席テラナー、ジュリアン・ティフラーも新入生として名を連ねている。あくまで政治的・外交的配慮によるポーズだと考えていたティフラーだったが、宇宙ハンザの要請で、チョモランマに週末だけ訓練に行かされることになった!

 

あらすじ

◇1273話 ウパニシャドの修行(H・G・エーヴェルス)(訳者:赤根 洋子/星谷 馨)

 NGZ429年10月。地球。ティフラーはストーカーに対する外交的儀礼で、ストーカーがエベレストに設立した戦士養成学校「ウパニシャド」に二日間体験入門するが、何の興味も抱かずに終わった。ところが数週間後には修行の事ばかり考えるようになり、銀河系に謎の勢力が暗躍しているにも拘らず、またウパニシャドに戻ってしまう。そして遂には修行に集中するため、全ての公職から身を引いてしまった。(時期:NGZ429年10月4日~12月31日)

※初出キーワード=テレポート・システム


◇1274話 パラ露泥棒(H・G・フランシス)(訳者:赤根 洋子/星谷 馨)

 銀河系では、エスタルトゥから運ばれて来た「テレポート・システム」の実証実験が開始された。一方、ろ座銀河では宇宙ハンザがノクターンとの協定に基づき「パラ露」の回収を開始した。しかし、ギャラクティカムは宇宙ハンザの利益独占に異を唱えて使者を派遣し、宇宙ハンザをけん制し始めた。さらに、かつてノクターンのためにパラ露を回収していた種族「カルタン人」が出現し、宇宙ハンザのパラ露回収を妨害した上に、パラ露の独占を主張して姿を消した。(時期:NGZ429年12月末~NGZ430年1月)

※初出キーワード=ヌジャラの涙


あとがきにかえて

 赤根洋子氏。ウパニシャドの外観がドイツのノイシュヴァンシュタイン城にそっくり、という話。


感想

 前半エピソード … 原タイトル:UPANISHAD(意訳:ウパニシャド)

 ティフラーが怪しげな修行にどんどんはまっていってしまうエピソード。一応戦士としての実力は付くようですが、修行者は人里離れたウパニシャドに籠り、最後には家族・知人とも縁を切ってしまう、というあたり、もうカルト宗教の犠牲者の転落を見ているようで、読んでいて不安でたまらなくなります。

 P25~P26に、ムチャクチャ唐突に「光の子供たち」「IPC(銀河系平和部隊)」についての説明が語られてびっくりしますが、どうやらこれらはエーヴェルスが外伝シリーズの方で書いていた物語の設定を本編に持ってきた、という事みたいです。外伝シリーズも読んでみたくありますよね。

 P130~P131で、ティフラーがローダンやアトランたちと別れるシーンが描かれるのですが、ティフラーが洗脳されていて既におかしくなっているためローダンたちに興味がないのはともかく、ローダンたちの方も“それ”の力の集合体から追放されるのに全然悲壮感が無く、「達者でな」と実に明るいのが、なんというか違和感が凄い。もう二度と会えない涙々の別れのシーンとかを期待したのは間違っていたのでしょうか。



 後半エピソード … 原タイトル:DIE PARATAU-DIEBE(意訳:パラ露泥棒)

 新しい舞台「ろ座銀河」での、新しい局面の幕開けの回。もうコスモクラートも混沌の勢力も、それどころかヴィーロ宙航士もエスタルトゥ関係者も誰も出てこない、ということで、今一体どういうサイクルなんだろう、と立ち位置が解らなくなってきます。

 P143。アダムスは、ローダンたちがコスモクラートの力で追放されたのに、それを評して「ヴィールス船でどこかに行ってしまったし」と、まるで無責任な観光旅行に出かけたような言い草なのがなんとも……、まあブルやロワ・ダントンやイルミナ・コチストワたちが一斉に仕事を辞めてヴィールス船でどこかに行ってしまったので、ローダンもそれと同じようなものだと思ったのかもしれませんけど。
 
 
 

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