感想:アニメ「タイガーマスクW」第23話「ウォーゲーム開幕!」


テレビ朝日系アニメ「タイガーマスクW」オリジナルサウンドトラック

テレビアニメ「タイガーマスクW」公式サイト http://www.toei-anim.co.jp/tv/tigermask_w/

【※以下ネタバレ】
 

第23話 ウォーゲーム開幕!

 

あらすじ

 GWMジャパンは、新たに「ウォーゲーム」というオープントーナメント開催を発表した。優勝賞金は100万ドルで、さらに優勝者にはGWM世界ヘビー級王者ザ・サードへの挑戦権が与えられる。ただし参加資格のあるのは、GWM参戦経験者か、王者経験者のみ。

 新日本プロレスは、さっそくオカダ、棚橋、内藤、永田といったメンバーの参戦を決める。またタイガーマスク/ナオトも、GWM世界王者となれば、対戦相手を指名することが出来るので、怨敵イエローデビルを引っ張りだせると考え、参戦を決意する。しかし高岡から仲間が必要と指摘され、実は実力者と目するふくわらマスクに声をかける。

 ウォーゲームにはなんとザ・サード自身が参戦することになり、GWMのレスラーたちに対して、自分を狙いに来ても構わないと自信満々で言い放つ。

 やがてマックスドームでウォーゲームのリングが披露されるが、それはピラミッドのようにマットを積み重ねた特設リングだった。ウォーゲームとはバトルロイヤルとトーナメントを組み合わせた試合形式で、参加レスラーたちは最下段からスタートし、誰か一人を倒せば一段上に登ることが出来る。そして最上段に二人が入った時点でトーナメントは終わり、インターバル後に、この二人のシングルマッチが開催される。

 ザ・サードは、試合開始早々、自分を倒した相手にはベルトを渡すと宣言する。タイガーマスクと、タイガー・ザ・ダーク/タクマは、この試合にイエローデビルが参加していると知り、急いで探しに向かう。しかしダークは以前いさかいのあったボスマンたちに捕まり、1対3で攻撃を受けてしまう。続く。


脚本:あみやまさはる  演出(絵コンテ):芝田浩樹  作画監督:井上栄作  美術:杦浦正一郎/斉藤信二/中林由貴


感想

 冷静に考えるとおかしいところもてんこ盛りだけど、それを含めても盛り上がった回でした。


 おかしい、というのは、高岡の発言で、ナオトに対し「仲間がいないと勝ち抜けない」とアドバイスしたところ。普通のトーナメントだったら、仲間もへったくれも必要ないわけで、視聴していて変なことを言うなぁと首をかしげていたのですが、あとからウォーゲームがバトルロイヤル要素がある変則マッチだと解ると、高岡の発言も納得いきました。逆に言えば、シナリオライター氏は、高岡が未来を知っていたことにしている訳で、もうこれ物凄いミスじゃないかなぁと。

 あと、ウォーゲーム開始早々、ザ・サードが「自分に勝ったらベルトを渡す」と宣言しますが、それだったら挑戦権を得るためにわざわざリングの上まで上る必然性がなくなるわけで、それもおかしな話じゃないかなとおもった次第です。

 というツッコミどころはあるものの、レスラーが勢ぞろいしてバトルロイヤル的にドッカンドッカン戦うというような状況はプロレスオタク的には興奮する展開で、ストーリー自体は結構楽しいです。


 ところで、高岡がザ・サードの参戦ニュースを見て、「虎の穴はこんなやつまで復活させているのかぁぁぁ~、ぐぬぬ」と怒り心頭でしたが、それもそのはず、高岡は前作「タイガーマスク」で、ケン高岡というプロレスラーだったころ(日本プロレス時代!)に虎の穴のボス「タイガー・ザ・グレート」に半殺しにされて、多分そのまま引退しています。そして、そのザ・サードはそのグレートの姿そのままだという……、そら怒るわ。


 次回は、なんとザ・サードとふくわらマスクさんが対決するようなニュアンスでしたし、先行きも楽しみだぜぇ。


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感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第59話(シーズン3 第6話)「汚された修道院」

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放送 BSジャパン

【※以下ネタバレ】
 
シーズン3(54~78話)の他のエピソードのあらすじ・感想は、以下のページでどうぞ
海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン3」あらすじ・感想まとめ
 

第59話 汚された修道院 The Cardinal (シーズン3 第6話)

 

あらすじ

某国の実力者である将軍が来るべき選挙で勝利し、国家の独裁を目論んでいた。そのためこれに反対する枢機卿を幽閉し、替え玉に協力させるという手段に出る。IMFチームは本物を救出し、将軍の野望を阻止できるか!?


某国の実力者である将軍が来たるべき選挙で勝利し、国家の独裁を目論んでいた。そのため、将軍に反対する枢機卿を幽閉。替え玉に整形手術を施し、将軍の支持を表明させるという手段に出る。この会見が済めば、今のところは生かしている枢機卿も確実に殺されてしまう。IMFチームは、捕らわれている本物を修道院から救出し、将軍の野望を阻止することができるか!?

※DVD版のタイトルは「酸素テントの中」。


【今回の指令】
 某国では、ゼプキー将軍(General Casimir Zepke)という男が次の選挙に出馬して独裁者になろうと目論んでいる。同国の枢機卿(すうきけい)スタニラス・スーチェック(Stanislaus Cardinal Souchek)は、その行動に唯一反対を唱えていたが、ゼブキーによって修道院に監禁されてしまった。ゼプキーはスーチェックそっくりの替え玉を用意して選挙を万全に進めようとしている。IMFはゼプキーの陰謀を粉砕しなければならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、ローラン、シナモン、バーニー、ウィリー
 ゲスト:無し


【作戦の舞台】
 某国


【作戦】
 ゼプキー将軍は、俳優のナゴスキーをスーチェックそっくりに整形させており、当日夜のテレビ放送で「枢機卿」として自分に有利な発言をさせる予定だった。

 バーニーたちはナゴスキーの部屋に病気を持った蚊の大群を放ち、刺されたナゴスキーは高熱で倒れる。ゼプキーは慌てて病院に電話し往診を頼むが、フェルプスは電話回線に細工し、病院のふりをして「町でペストが発生したので往診している暇はない」と返事する。直後、フェルプスとシナモンは医者と看護婦としてパンクした車で修道院に乗り付け、助けを求める。ゼプキーはフェルプスに強引にナゴスキーの治療を依頼する。

 しばらく後、ローランが、スーチェックの友人の枢機卿として修道院に現れる。ローランは病気の「スーチェック(実はナゴスキー)」に会うが、すぐに偽者だと騒ぎだし、ゼプキーたちは口封じのためローランを地下室の石棺の中に押し込む。しかしローランはあらかじめ用意していたジャッキを用いて石棺を抜け出し、外で待機していたバーニーとウィリーを呼び込む。

 フェルプスは治療のためと言って、ナゴスキーのベッドを酸素テントで覆って目隠し状態にする。同じころ、ローランたちはスーチェックが監禁されている、ナゴスキーの部屋の隣室に入り、ベッドの頭辺りの壁に穴を開ける。そして本物のスーチェックとナゴスキーを入れ替える。

 ゼプキーは、本物のスーチェックをナゴスキーだと思い込み、ベッドから引っ張り出して、修道院前に集まっていたマスコミの前に連れていく。そして自分はスーチェックと和解したと前置きしてスーチェックに話させると、本物のスーチェックは、ゼプキーは偽善者の人殺しだとののしって、そのまま車で立ち去ってしまう。呆然とするゼプキーをしり目にIMFメンバーも車で逃走して〆。


監督: スットン・ロレイ
脚本: ジョン・T・デュガン


感想

 評価は○。

 お馴染みの、IMFが外国の政治問題に介入するエピソード。まあ荒唐無稽といえるエピソードだったが、それゆえに結構面白かった。


 クライマックスの大仕掛け、修道院の部屋の壁に大穴を開けて偽物と本物の枢機卿を入れ替える、というシチュエーションはもう傑作の一言だった。壁を構成している一辺が数十センチもある石をウィリーが軽々と引っ張り出してしまう時点で無理があるし、またそもそも、この作戦はニセ枢機卿のナゴスキーが壁際のベッドに寝かされていないと成立しないが、どう見てもそこは運任せだった。また、入れ替えをごまかすため、酸素テントでベッドを覆っていたが、上半身の辺りしか隠せていないので、偽物を引きずり出した時点でベッドから足が消えてしまい、ゼブキー将軍は一目で気が付いたに違いない。などなど、もうツッコミどころ満載の作戦なのだが、結果が痛快なので、もうそのあたりはあまり気にならなかった。やはりIMFの作戦は、地道で筋が通っているより、今回のような派手で笑ってしまうような作戦の方が楽しい。

 あと、中盤に、ローランが地下室で石棺に閉じ込められた際、十字架に偽装したジャッキで蓋を持ち上げてから、小さな金属棒を蓋と棺の間に差し込む。見ているほうとしては、これは単なる空気確保用に隙間を開けただけだと思っていたのだが、そのあと、ローランはこの棒をコロ代わりにしてするすると蓋をスライドさせて脱出してしまう。いくら何でもそれは無理だろうと言いたくなったが、話の流れを重視して、気にしないことにした方が良いみたいである。

 終盤、ローランが持ち込んだ変装マスクでスーチェックそっくりに変装する。これにより、修道院の中には一時的にだが、「本物のスーチェック」「スーチェックそっくりに整形したナゴスキー」「スーチェックに変装したローラン」という、同じ顔をした人間が三人いたことになり、その状況が面白かった。また珍しいことに、この回は特殊撮影で、本物のスーチェックと同じ顔をしたローランが顔を合わせるというシチュエーションが実現している。

 仕事を終えたローラン、バーニー、ウィリーが背広に着替えだし、どうやってこの姿で修道院を脱出するのかと思っていたら、その時間にマスコミが修道院に来ることになっていて、その集まりに紛れ込んでしまう、という展開はちょっとおおっと感心した。

 最後、得意満面のゼブキー将軍が、ナゴスキー(と思っているが実は本物のスーチェック枢機卿)にコメントをさせると、自分を絶賛すると思っていたのに反対に徹底的に悪口を言われてしまい、何が何だかわからなくて呆然となるシーンが痛快に尽きた。多少話に粗があっても、こういう楽しいシーンで締めくくると、全体としての印象はとても良い。今回はそういう最後の爽快感が上手く効いた話だった。


 ちなみに原題「The Cardinal」とは「枢機卿」の意味。


参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスが(多分)図書館の中にある鍵のかかった戸棚を開くと、中には大きめの封筒とオープンリール式テープレコーダーが入っている。フェルプスはテープを再生して指令を聞きつつ、封筒の中の写真を確認する。指令は最後に「なおこのテープは自動的に消滅する」といい、テープから煙が吹き上がる。


参考:指令内容

 おはよう、フェルプス君。その男はゼプキー将軍といって、来るべき選挙で独裁者の地位を確保しようと計画中である。それに真っ向から反対を唱えるものはただ一人、あくまで自由国家としての存続を願う枢機卿(すうきけい)スタニラス・スーチェックだけである。ゼプキー将軍は、一月前、修行のためゾルナー修道院に入った枢機卿を監禁、枢機卿に似た替え玉を後釜に据えて選挙に万全を期し、一挙に独裁権を手中に収めようという腹である。

 そこで君の使命だが、枢機卿スーチェックを救い出し、ゼプキー将軍の意図を粉砕することにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する。成功を祈る。
 
 

シーズン3(54~78話)の他のエピソードのあらすじ・感想は、以下のページでどうぞ

海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン3」あらすじ・感想まとめ
 
 

感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第61話(シーズン3 第8話)「美しき外交官夫人」

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【※以下ネタバレ】
 
シーズン3(54~78話)の他のエピソードのあらすじ・感想は、以下のページでどうぞ
海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン3」あらすじ・感想まとめ
 

第61話 美しき外交官夫人 The Diplomat (シーズン3 第8話)

 

あらすじ

合衆国ミサイル基地の所在地情報が敵国に渡ってしまう。IMFチームはこの裏付けをとるため活動するスパイをはめるべく大統領顧問夫人の協力を取りつけると共に、フェルプス(ピーター・グレイブス)がスパイに扮して敵国大使館員に接触する。


合衆国ミサイル基地の所在地情報が敵国の手に渡ってしまった!IMFチームは、敵国スパイがこの裏付けをとるため動きだすのを察知。大統領顧問夫人に、おとり役としての命がけの危険な任務の協力を取りつけると共に、フェルプス(ピーター・グレイブス)がアメリカ潜入中のスパイに扮して敵国大使館員に接触する。

※DVD版のタイトルは「二重スパイをでっちあげろ!」。


【今回の指令】
 一昨日、アメリカのミサイルコントロールセンター四か所の位置を示した機密書類が、敵国の諜報員バレット少佐に盗まれてしまった。バレットは逮捕されたが、書類はバレットの上司ヤトコフ大佐の手に渡り、ヤトコフは、この情報が本物か確証を得るため、部下のロジャー・トランドに裏付けを取るように命じた。このままでは、アメリカは敵国のミサイル攻撃に裸同然となってしまう。IMFはそのような事態を防がなければならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、ローラン、バーニー、ウィリー
 ゲスト:スーザン・ブキャナン(大統領顧問夫人)、医師(本名不明)


【作戦の舞台】
 アメリカ国内


【作戦】
 IMFは大統領顧問ブキャナンの夫人スーザンに作戦への協力を依頼する。スーザンはローラン演じる悪徳カメラマンに浮気の場面を撮影されて強請られているというふりをして、トランドに弱音を吐く。トランドはローランを脅して写真とネガを奪い取り、スーザンに渡して恩を売る。そして、スーザンを上手く誘導して金庫を開けさせ、金庫内の秘密書類を撮影し、スーザンには睡眠薬を致死量飲ませ、殺したと思って立ち去る。スーザンはすぐにIMFによって助けられる。

 一方フェルプスは、逮捕されたバレットの部下のふりをしてヤトコフと接触する。ヤトコフは本国にフェルプスの身分照会を行い、IMFは身分証明書類を、一見本物だが実は捏造と分かるようにしてすり替える。ヤトコフは書類が偽造だと気が付き、フェルプスはアメリカのスパイだと確信するが、アメリカ側の動きを見るためあえて気が付かないふりをする。

 やがてトランドが手に入れたミサイル基地の場所の情報を持ち帰り、それは最初にバレットが入手した情報と同じだった。ところが直後、フェルプスもミサイル基地の情報を持ってくるが、それもまたやはりバレットやトランドの情報と同じだった。

 ヤトコフは、アメリカのスパイが持ってきた情報が本物のはずがないので、つまり最初にバレットが手に入れた情報はそもそもニセ情報だったのだと結論付ける。さらにトランドも二重スパイだったのだと疑って射殺してしまう。フェルプスはその銃撃の音を聞きながら大使館を出ていき、最後にIMFの四人が車で立ち去るシーンで〆。


監督: ドン・リチャードソン
脚本: ジェリー・ルドウィグ


感想

 評価は○。

 今回は敵側に流出してしまった機密情報を、敵方に嘘情報だと思わせて自ら破棄させる、という無理難題を遂行する。確かにこれはIMF(Impossible Missions Force)が担当すべき「不可能任務」である。もっとも話はちょっと微妙ではあったが……

 今回は何故か作戦にシナモンが呼ばれておらず、大統領顧問夫人でつまり素人のスーザンがミッションで重要な役割を命がけで遂行する羽目になってしまっている。緻密な作戦が売りのIMFだが、今回はいきなり人選の段階でかなり無理があるとしか言いようがない。そして今回は、なじみのないスーザンとトランドの会話シーンがかなり多いため、あまりスパイ大作戦という感じがしなくてイマイチだった。ちなみにスーザンを演じたのはリー・グラントで、のちに「刑事コロンボ」では「死者の身代金」に出演して、犯人役を演じている。どこかで聞いた名前だと思った。

 今回の作戦は最後まで方向がつかめず、最後の最後にヤトコフ大佐に丁寧に説明してもらって、ようやくIMFの計略の意味が解った。理解してみれば、結構巧妙な作戦ではあったが、やや面白みに欠けるオチではあった。

 ところでヤトコフ大佐は、トランドを裏切り者扱いしてさっさと射殺してしまったが、視聴者の感覚としては、せいぜいトランドは無能という程度で殺すまでも無かった、という気がする。もっとも東側某国は、大戦中敗れた将軍はさっさと射殺してしまっていたそうなので、「失敗=死」という掟が1968年(放送年)でも健在だったのかもしれない。


参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスが公園の中にある火災報告用の電話ボックス(棒の上に赤い木箱が付いており、中に電話が入っている)の蓋を開けると、中には大きめの封筒とオープンリール式テープレコーダーが入っている。フェルプスはテープを再生して指令を聞きつつ、封筒の中の写真を確認する。指令は最後に「なおこの録音テープは自動的に消滅する」といい、テープから煙が吹き上がる。


参考:指令内容

 おはよう、フェルプス君。一昨日、アメリカ合衆国のミサイルコントロールセンター四ヶ所の所在を示す機密書類が盗まれ、それに関係した敵国の駐米諜報官バレット少佐たちは逮捕されたが、そのときは既に遅く、書類はこの男、ワシントンにあるその国の大使館付武官ヤトコフの手に渡った後であった。有力な情報を入手した時の常として、それが本物であることを裏書きする確証が必要であり、ヤトコフはその仕事を部下のトップスパイ、ロジャー・トランドに命じたが、このままにしておけば、やがて我が国は敵のミサイル先制攻撃の前に裸同然とならざるをえない。

 そこで君の使命だが、そのような事態を未然に防ぐことにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、この録音テープは自動的に消滅する。成功を祈る。


シーズン3(54~78話)の他のエピソードのあらすじ・感想は、以下のページでどうぞ

海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン3」あらすじ・感想まとめ
 
 

感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン9」第6話「トラスト・ノー・ワン」

X-ファイル シーズン9 (SEASONSコンパクト・ボックス) [DVD]

■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン9 http://dlife.disney.co.jp/program/drama/xfile_s9.html
放送 Dlife。全20話。

【※以下ネタバレ】
 
※シーズン9の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら→「X-ファイル シーズン9」あらすじ・感想まとめ
 

第6話 トラスト・ノー・ワン TRUST NO 1

 

あらすじ

 お題は「無敵兵士」。


 ドゲットがスカリーに、モルダーに連絡を取りたいと要求してきた。匿名の相手がドゲットに「無敵兵士」の氏名リストの提供を申し出てきたが、直接モルダーに会って渡したいと言っているという。しかしスカリーは、モルダーへの連絡方法が解らないと嘘をつく。

 やがてスカリーは、若い夫婦が争っている場に遭遇し、夫は赤ん坊を奪って逃げ去ってしまった。スカリーは、妻パティに同情し自分に家に宿泊させる。ところが全ては夫婦が、スカリーに近づきモルダーに連絡を取るためにうった芝居だった。夫は安全保障局の職員で、政府が「無敵兵士」という一般市民を陥れる陰謀を企んでいるらしいと知り、モルダーに知らせたいと言う。また二人の娘は、スカリーの息子ウィリアム同様に念力めいた力が使えると言い、パティはスカリーと協力して子供に何が起きているのか知りたいと言う。

 直後、安全保障局の上司(役名:影の男(Shadow Man))がスカリーに接触し、「無敵兵士」計画を止めるためにリストを提供するので、24時間以内にモルダーに連絡を取れと命令する。スカリーは意を決してモルダーにメールを送り、モルダーは列車で戻ってくることになった。

 ところが駅に影の男が現れ、スカリーたちを襲撃し、パティの夫を射殺した。さらに影の男は撃たれた上に列車に轢かれたはずなのに死体が見つからなかった。影の男は明らかに無敵兵士だった。影の男は、列車から飛び降りたモルダーを追って採石場に向かい、スカリーたちも後を追った。影の男は、スカリーに、モルダーかウィリアムが死ぬ必要があると語るが、突然採石場の崖に突っ込んで死んだ。無敵兵士の弱点はおそらく採石場に有った鉄分だった。結局モルダーは、また行方をくらました。


監督 トニー・ワームビー
脚本 クリス・カーター & フランク・スポトニッツ


感想

 評価は○。

 X-ファイルのエピソードの中で、続き物となっている、いわゆる「神話」と呼ばれる作品群の一作。ベテランのクリス・カーターとフランク・スポトニッツがシナリオを書いているので、手堅い出来栄えで、まずまずは満足できた。


 サブタイトルの「トラスト・ノー・ワン」(TRUST NO 1)とは、劇中でモルダーが使用しているメールアドレス「trust_no1@mail.com」から来ているが、X-ファイルファンならすぐ解る様に、このアドレスの元ネタはシーズン1の最終回(第24話)「三角フラスコ(終章)」で、ディープ・スロートが口にした「誰も信じるな(TRUST NO ONE)」である。モルダーらしい命名でちょっと笑ってしまった。


 今回の話は「神話」に属してはいるが、過去のシリーズの神話物とはまるで方向性が違うので、ちょっと落ち着かなかった。過去の神話エピソードといえば、キーワードとして「UFO」「地球外生物」「秘密組織」「スモーキング・マン」「サマンサ」「緑色の血」「バウンティハンター」「ブラックオイル」「顔のない男たち」のどれかが必ず入っていて、異星人の侵略計画だの、政府と異星人の密約だのという、オカルト好きならワクワクする話が展開されたが、今回は宇宙人ネタのどれも全く出てこず、やや物足りなさを感じさせた。

 どうやらこのシーズンは「神話」は「無敵兵士」というキーワード一本で押し通すつもりの模様だが、「宇宙人が既に地球に来ていて、そのあたりを徘徊している」というシチュエーションと比較すると、やはりインパクトは弱いと言わざるを得ない。今回もベテラン二人のシナリオで上手く雰囲気を出してはいたが、かつての「神話」と比較すると、やはり食い足りないという感じだった。というか、宇宙人の地球侵略計画は今はいったいどうなっているのか、と尋ねたいところである。

 今回は、無敵兵士が、モルダーとウィリアムを危険視していて殺そうとしているという事情が明かされたが、どうもとってつけた感が強く、「超能力ベビーのウィリアムならともかく、ただの人のモルダーが無敵兵士にとって危険か?」という感が否めなかった。あと不死身のはずの兵士が鉄分に弱いというのも、なんだかなぁという感じである。クリス・カーターたちは、真面目に先の事を考えて伏線を仕込んでいるのかと、微かに疑問が湧いてくるオチだった。


 さて、今回のエピソードでは「安全保障局」の職員たちが重要な役目を演じている。視聴しているときは、安全保障局とは何なのかピンと来ていなかったのだが、調べてみるとこれは「国家安全保障局」(National Security Agency)、通称「NSA」の事だった。なるほど、これなら知っている。映画などでそこら中を盗聴をしまくって、主人公たちの敵となることが多いあの有名な諜報機関の事だったのである。これで劇中であらゆるところ(スカリーの自宅内から往来のあらゆる場所まで)を監視カメラで捉えている、という描写も納得がいった。

 劇中では、スカリーが安全保障局に自宅を監視されているのを知って憲法違反だと食って掛かると、相手が「テロリストに甘い憲法など守る必要はない」云々と切り返す。そして、このエピソードの放送は2002年1月6日で、つまりあの2001年9月11日の同時多発テロから数か月しか経っていない時期なのである。(当時の)最新の情勢を素早く取り入れていて感心すると言うか、ご時世が解ると言うか、だった。

 中盤に、荒野の真ん中に呼び出されたスカリーが、安全保障局の髭上司に「こんな何にも無いところに呼び出すなんて」云々というと、相手は「かつてはそうだが、今は違う」と答えるシーンがある。どうも意味が取れずに首をかしげていたのだが、原語の台詞にあたってみてようやく意味が分かった。正しいニュアンスとしては、

スカリー「人里離れた場所に呼び出すなんて」
髭男「昔はともかく、今は人里離れた場所というのものはない(=どこであっても監視されている)」

という意味だった様である。番組のオープニングで、通常は「THE TRUTH IS OUT THERE」(真実はそこにある)と表示されるところが、今回は「THEY'RE WATCHING」(彼らは見ている)になっているのも、そういう意味を含んでいると推測される。


 スカリーの家に泊まっていたパティが、ウィリアムを抱き上げる前に何かアンテナのついた機械の電源をオフにするシーンがあり、無線LANのルータの電源でも切っているのかと思って変に感じたのだが、調べてみると「ベビーモニター」を止めていたのだった。そもそもベビーモニターというのも何かすら知らなかったのだが、カメラやマイクでベッドの赤ん坊の様子を確認する装置の事だった。なるほど、よく見ると機械の側面にカメラらしいものがついていた。つまりパティは、スカリーに気が付かれないように監視装置をオフにした、というシーンだったのである。知識が無いと、意味ありげなシーンも伝わらないものである。一つ勉強になった。


シーズン9の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら

「X-ファイル シーズン9」あらすじ・感想まとめ
 

感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン9」第5話「蝿の王」

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■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン9 http://dlife.disney.co.jp/program/drama/xfile_s9.html
放送 Dlife。全20話。

【※以下ネタバレ】
 
※シーズン9の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら→「X-ファイル シーズン9」あらすじ・感想まとめ
 

第5話 蝿の王 LORD OF THE FILES

 

あらすじ

 お題は「未知の生物」。


 ドゲットとレイエスは、学生が異常な死に方をしたという事件で呼び出される。学生は左顔面が陥没しており、頭の中には蠅の大群が巣くっていた。スカリーの検死の結果、死因は蠅が脳を食べつくしたためで、その結果頭蓋骨が陥没したと解るが、普通の蠅が何故その様な行動に及んだのかは不明だった。

 レイエスは、死んだ学生と関りがありそうな生徒ディランに事情聴取を行う。ディランの母親は学校の校長で、その事もあり、ディランは死んだ学生の属していたグループの生徒からいじめを受けていた。ところが聴取の最中、ディランの体に大量の蠅がたかり、ドゲットたちを驚かせる。

 調査の結果、ディランの汗からは蠅を引き付けるフェロモンが検出されるが、ディランが特異体質だとしても、蠅に人間を襲わせることが出来るとは考えられず、捜査は難航する。

 やがてディランをいじめていたグループが、ディランを殺人犯だと決めつけ吊るしあげようとするが、逆にディランに叩きのめされる。ディランは普通の人間ではなく、口から糸を吐いて人間を身動きできないようにする能力があると解り、ドゲットたちは行方を探し回るが、ディランの家で糸に包まれて死んだ四つの死体を見つけただけで、結局母子共々取り逃がす。おそらく、ディランと母親は人間と昆虫と中間にある突然変異体だったに違いなかった。

 最後。ディランが好きだった女の子の家の窓の外に飛んでいる蛍が、「I LOVE YOU」という文字を形作るシーンで〆。


監督 キム・マナーズ
脚本 トーマス・シュノーズ


感想

 評価は△。

 サブタイトルが有名な小説「蠅の王」と同じなので、重苦しいホラーストーリーを期待してたら、実際は薄っぺらい内容の凡作でしか無かったので、失望甚だしかった。


 十代の学生たちの話、性格は悪いが人気者のカースト上位の学生たち、そんな連中と付き合う女の子、女の子に好意を寄せているがカースト下位のいじめられっ子、等、既存の学園物で使い古されたような設定ばかりが連発されたため、いきなり序盤から話への興味を維持するのがひどく困難だった。

 また、それでも「いじめられっ子か突如手に入れた超常の力でカースト上位の相手に復讐する」という真相ならまだ面白かった気がするが、結局「ディランたちは人間とは違う未知の生物」という事になり、ディランたちが口から糸を吐いて人間を身動きできなくさせ始めたあたりで、もうまじめに視聴する気力を失ってしまった。いくらなんでも、この展開はあまりにもあんまりすぎたのではなかろうか。

 結末も、実は人間ではなかった隣人が車でどこかへと消えていく、というシーンで締めれば、まだいくらか余韻が残ったと思うが、実際にはディランが好きな女の子にホタルの光で「I LOVE YOU」というメッセージを送るという、ロマンチックというか馬鹿馬鹿しいというかのシーンで〆となってしまい、結局最後まで全くノリきれないエピソードとなってしまった。


 ところで、驚くべきことだが、このエピソードは、アメリカ人にとっては「ユーモア話」という事になっているそうである。アメリカ人の笑いの感覚は、日本人のそれとはかなり違うと痛感させられる。まあ確かに昆虫学者のブロンジーニ博士のキャラクターはユーモラスで、スカリーにしきりに色目を使うシーンは面白かったし、博士とスカリーが「フェロモンが濃くなった」と言って空を見上げている間に、その後ろをディランが自転車で通り過ぎるシーンもちょっとクスッとしたことは認める。しかし全体的に見て、この話を「ユーモア」枠に入れる日本人は、あまりいないような気がする。


 しかしまあ、ディランや母親の口の中に何か黒っぽい物がうごめいている、という描写は、シーズン5・第15話「旅人」に使われたギミックを思い出させる不気味さだったので、そこだけはちょっと評価したい。


シーズン9の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら

「X-ファイル シーズン9」あらすじ・感想まとめ
 

海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン3」あらすじ・感想まとめ

スパイ大作戦 シーズン3<トク選BOX> [DVD]

スパイ大作戦BSジャパン http://www.bs-j.co.jp/missionimpossible/
放送 BSジャパン

 
※他のシーズンのあらすじ・感想のまとめは、以下のページからどうぞ
海外ドラマ「スパイ大作戦」あらすじ・感想まとめ(トップページ)
 
 

アメリカでの放送時期

 1968年10月~1969年4月。全25話(第54話~第78話)
 

登場人物

ジム・フェルプス(ピーター・グレイブス)(声:若山弦蔵/麦人 ※追加収録部分のみ)
 IMF2代目リーダー。


●ローラン・ハンド(マーティン・ランドー)(声:納谷悟朗
 変装と手品の名人。


●シナモン・カーター(バーバラ・ベイン)(声:山東昭子/弥永和子 ※追加収録部分のみ)
 元モデルの美女。


●バーニー・コリアー(グレッグ・モリス)(声:田中信夫/丸山壮史 ※追加収録部分のみ)
 メカニックや小道具の担当。


●ウィリー・アーミテージ(ピーター・ルーパス)(声:小林修/高瀬右光 ※追加収録部分のみ)
 元重量挙げ選手。怪力。後方支援担当。


●指令の声(ボブ・ジョンソン)(声:大平透
 IMFリーダーに指令を与える謎の人物。声だけの登場で正体は一切不明。


各話のあらすじ・感想

※サブタイトルが、BSジャパン放送分とオリジナルタイトル(DVD収録分)で異なっている場合は、カッコ内にオリジナルタイトルを記載した。

話数(通算)邦題原題舞台・任務評価
01(54) プリンセスの帰還 (甦ったプリンセス)The Heir Apparentポビア国。国王の地位を狙う将軍の陰謀の阻止
02(55) 奇跡のカムバック 前編The Contender Part1アメリカ国内。スポーツ界の八百長蔓延の阻止
03(56) 奇跡のカムバック 後編The Contender Part2同上
04(57) 道を外した傭兵たち (密室の金塊) The Mercenariesアフリカ某国。外人部隊指揮官の処分と金塊の回収
05(58) 死刑執行1時間前 (処刑作戦)The Executionアメリカ国内。食品業界の大物の政界支配の阻止
06(59) 汚された修道院 (酸素テントの中)The Cardinal某国。独裁を目論む将軍の陰謀の阻止
07(60) 若返った女帝 (独裁宣言)The Elixirサン・コルドバ。故大統領夫人のクーデター計画の阻止
08(61) 美しき外交官夫人 (二重スパイをでっちあげろ!)
The Diplomatアメリカ国内。盗まれた軍事機密の処理
09(62) もう一冊の台本 (巨頭会談)The Play東側国家UCR。反米的文化相の失脚
10(63) 美食家が覗いた未来 (幻の契約書)The Bargainアメリカ国内。追放された元独裁者の野望の阻止
11(64) コールドスリープ (一千万ドル強奪事件)The Freezeアメリカ国内。盗まれた1000万ドルの回収
12(65) 捕らわれた女スパイ (スパイ交換作戦)The Exchange東側某国。シナモンの救出
13(66) エリート情報官の推理 (欺瞞作戦)The Mind of Stefan Miklosアメリカ国内。敵側スパイへの偽情報の提供
14(67) バイオ兵器実験 (生体実験)The Test Case某国。細菌兵器研究の壊滅
15(68) 奴を証人席へ!The Systemアメリカ国内。カジノ支配人の裁判への出廷
16(69) ガラスの監獄 (ガラスの監房)The Glass Cage某国。レジスタンスリーダーの監獄からの救出
17(70) 審判の日 (プルトニウム240)Doomsdayヨーロッパ某国。プルトニウムの奪回
18(71) ウィークポイント (ウィークポイントをつけ!)Live Bait某敵国。味方スパイの嫌疑を晴らす
19(72) 地下百メートルからの脱出 (地下百メートルの円盤)(前編)The Bunker Part1某敵性全体主事国家。ミサイル開発研究者夫妻の救出とミサイルの破壊
20(73) 地下百メートルからの脱出 (地下百メートルの円盤)(後編)The Bunker Part2同上
21(74) ニトログリセリンNitroカラク王国。国王暗殺の阻止
22(75) 女スパイ・ニコル (女スパイが燃える時)Nicole某敵国。二重スパイリストの入手
23(76) 出入り簡単な金庫室 (金庫へ追い込め!)The Vaultコスタ・マテオ。大蔵大臣の着服の暴露
24(77) キャバレーでの出来事 (幻の殺人)Illusion東ヨーロッパ人民共和国。秘密警察長官候補二人の失脚
25(78) 尋問 (訊問)The Interrogator某非友好国。敵側スパイからの秘密の聞き出し
 
 

感想

 シーズン3は、シーズン2に引き続き「フェルプス・ローラン・シナモン・バーニー・ウィリー」のゴールデンチームが活躍する、いかにも「スパイ大作戦」らしいシーズンでした。

 個人的に最高のエピソードだと思うのが1話(通算54話)「プリンセスの帰還」で、ミッションの面白さもさることながら、クライマックスでのパイプオルガンバージョンのメインテーマ曲が流れる中、荘厳な雰囲気の中で展開された結末は感動ものでした。また10話(通算63話)「美食家が覗いた未来」では、IMFが未来予知というSFめいた設定をもってターゲットを見事にはめる、という痛快エピソードで、仕掛けの面白さならこちらがシーズン最高の作品でした。

 このどちらも、シナリオを書いたのはロバート・E・トンプソンという人ですが、これだけの傑作を書ける人が、これ以降シナリオに関わってくれなかったのは残念でなりません。

 ちなみに、ローランとシナモンはこのシーズン限りで番組を去ってしまいました。二人の活躍がもう見られないというのは実に寂しい。
 
 

他のシーズンのあらすじ・感想のまとめは、以下のページからどうぞ

海外ドラマ「スパイ大作戦」あらすじ・感想まとめ(トップページ)
 
 

感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン9」第4話「4-D」

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※シーズン9の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら→「X-ファイル シーズン9」あらすじ・感想まとめ
 

第4話 4-D 4-D

 

あらすじ

 お題は「パラレル・ユニバース」。


 ドゲット、レイエス、フォーマーたちは、女性ばかりを狙い舌を切り取る猟奇殺人者ルケシュを追っていたが、レイエスは首を切られて瀕死となった上に銃を奪われてしまう。さらにルケシュを追ったドゲットは、自由に姿を消す力を持つルケシュに翻弄された挙句、レイエスの銃で撃たれてしまう。


 レイエスはドゲットに新居への引っ越しを祝ってもらっていたが、そこにスキナーからドゲットが撃たれて重傷との連絡が入り驚く。次の瞬間、目の前にいたはずのドゲットは消え失せていた。何故ドゲットが撃たれた場所にいたのか理由が不明だった。ドゲットは意識不明の重体で、目覚めても半身不随が確実という状況の上、ドゲットを撃ったのはレイエスだという疑いがかかる。現場から見つかった弾丸はレイエスの銃の線条痕がついており、しかもレイエスが撃つところを見たという目撃者までがいた。その目撃者とはルケシュだった。

 フォーマーはレイエスを疑うものの、ドゲットが撃たれた時のアリバイがある上、レイエスの銃が使用された形跡がないため混乱する。さらに目覚めたドゲットは、自分は殺人犯としてルケシュを追っていたこと、自分はルケシュに撃たれたこと、レイエスは瀕死だったこと、などを語り、レイエスたちを困惑させる。

 レイエスは今回の事件について説明できる仮説を立てる。パラレル・ユニバースという概念によれば、この現実世界の他に、もうひとつそっくりの別世界が存在する。ルケシュは、この二つの世界を自由に行き来する能力を持つ可能性がある。だとすれば、ルケシュは、向こうの世界に移動しては猟奇殺人を行っており、向こうの世界でルケシュを追ったドゲットは、一緒にこちらの世界に来てしまい、そのため本来こちらにいたドゲットは押し出されて消えてしまった、というものだった。

 スキナーたちはドゲットの証言をもとに、ルケシュを容疑者として扱い、焦ったルケシュは母親を惨殺して逃亡する。レイエスは自分がおとりとなりルケシュをおびき寄せ、ルケシュはフォーマーに射殺された。ドゲットはレイエスに、自分が死ねばこの世界の本来のドゲットが帰ってくるはずだと言い、生命維持装置を止めるように懇願する。レイエスが装置を止め、ドゲットが死んだ瞬間、レイエスは引っ越し直後のドゲットと会話していた場面に戻る。


監督 トニー・ワームビー
脚本 スティーヴン・マエダ


感想

 評価は○。

 X-ファイルには珍しく、超常現象では無くSF要素のパラレル・ユニバース(並行宇宙)をテーマにしたエピソードで、そこそこには面白かった。


 今回は、X-ファイルのいつものエピソードとは異なり、X-ファイル課のメンバーが怪事件を捜査していくのではなく、自分たち自身が不可思議な事態の主役となる、という展開となっている。主役コンビが異常な状況に巻き込まれ、そこから脱するまでを描く、というシチュエーションは、シーズン6の第14話「月曜の朝」を連想させた。

 冒頭、いなきりドゲットたちが殺人犯を追っているという状況からスタートし、ドゲットとレイエスが二人とも倒れるという展開で度肝を抜いておいて、しかもオープニングが終わると何故か二人とも無事、ということになっているので、もう視聴しているこちらは大混乱で、中盤までどういった話なのか全く頭が付いていけなかった。しかし、途中で親切にレイエスがパラレル・ユニバースという概念を持ち出して、親切丁寧に状況を解説してくれたので、ようやく合点がいった。複雑な設定の話ではあったが、終わってみると展開に破綻も無く、そういう意味ではよくまとまったシナリオだったと評価したい。

 本エピソードでは、主役ドゲットが撃たれて半身不随となり、身動きも呼吸もままならず、会話も機械を介して行うだけ、という状態になり果てており、その姿は結構衝撃的だった。

 ドゲットは病院、レイエスは容疑者扱い、と主役二人が活躍できない状況のため、ルケシュを追い詰める役目はスキナーやフォーマーの仕事になってしまっているし、またルケシュの異世界間を自由に移動する能力も特にクローズアップされていないため、いつもの「異能力者との対決」というサスペンス要素はほぼゼロだった。そして話の主眼は、「今回は一体何が起きているのか」という謎解きに置かれていたが、変則的な話ながら、これはこれで結構面白かった。

 もっとも、シナリオ担当のスティーヴン・マエダによれば、まず念頭に「寝たきりで意思の疎通にも困難が伴うキャラクター」というアイデアがあり、そこから発展させて「ゲストではなくメインキャラを寝たきりにさせる」→「ドゲットをその対象にする」→「その状況を成立させるためパラレル・ユニバース云々をひねり出した」ということだった模様である。もう一つの世界云々というテーマが、実は後付けのアイデアである、という事には驚かされた。

 今回の話は、謎解き要素の面白さもさることながら、レイエスのドゲットへの恋愛感情が多々垣間見えるエピソードとなった。レイエスが病床のドゲットの髭を剃るシーンや、泣きながら生命維持装置を止めるシーン、戻ってきたドゲットを抱きしめるシーン、等、印象的なシーンが目白押しだった。


一言メモ

 番組のオープニングで、通常は「THE TRUTH IS OUT THERE」(真実はそこにある)と表示されるところが、今回は文章を丸ごと裏返した鏡文字になっていました。これは今回のテーマであるパラレル・ユニバースを暗示しているそうです。

 またサブタイトルの「4-D」とは、表向きはルケシュの住んでいる部屋番号ですが、「四次元」という意味も含んでいる様です。まあ今回のエピソードに四次元はほぼ関係ありませんでしたが……


シーズン9の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら

「X-ファイル シーズン9」あらすじ・感想まとめ
 

感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン9」第3話「ダイモニカス」

X-ファイル シーズン9 (SEASONSコンパクト・ボックス) [DVD]

■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン9 http://dlife.disney.co.jp/program/drama/xfile_s9.html
放送 Dlife。全20話。

【※以下ネタバレ】
 
※シーズン9の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら→「X-ファイル シーズン9」あらすじ・感想まとめ

 

第3話 ダイモニカス DAEMONICUS

 

あらすじ

 お題は「悪魔憑き」。


 老夫婦が猟奇的な手段で殺害され、現場には「DAEMONICUS」(ダイモニカス)という言葉が残されていた。この言葉は、ラテン語で「悪魔」「悪魔が憑りつく」という意味だった。やがて、近くの精神病院から患者一人と看守一人の二人が消えていることが判明し、FBIはこの二人を容疑者とみなして捜査を進める。

 逃げ出した患者の隣室の男コボルドは、自分が犯人たちと精神的に繋がっていると示唆し、その後コボルドの言葉通り、犯人一人の惨殺死体が見つかる。どうやら犯人同士が殺し合いをしたらしかった。レイエスは、犯人は悪魔に憑りつかれており、コボルドは悪魔と犯人たちを精神的に中継する「媒介」ではないかと推測する。しかしドゲットは、オカルト的発想を受け入れず、コボルドこそが事件の首謀者だと疑う。実際コボルドは、過去には大学の教授として悪魔について研究しており、悪魔云々の知識は豊富だった。

 やがてコボルドのうわ言通り病院の精神科医モニクが殺害され、レイエスはますますコボルドが悪魔とつながっている事を確信するが、ドゲットはコボルドが捜査陣を相手に犯罪ゲームを仕掛けているだけだと譲らない。そしてコボルドは犯人の一人がいる場所を指摘し、ドゲットたちが急行するが、犯人は自殺していた。ドゲットは現場に連れてこられていたコボルドが脱走しようとしたため銃撃するが、撃たれたコボルドは川に転落する。そして引き上げられた遺体はコボルトではなく病院の看守だった。

 事件後。ドゲットは今回の事件は全てコボルトが仕組んだ犯罪ゲームだったと結論付ける。被害者たち「ダレンとエブリン夫婦」「医者モニク」「看守カスター」の名前の一部ずつ(DAE, MONI, CUS)をつなげると「DAEMONICUS」となるからだった。


監督 フランク・スポトニッツ
脚本 フランク・スポトニッツ


感想

 評価は△。

 猟奇的な殺人事件に本当に悪魔が関わっている(かもしれない)、という王道系のエピソードだったが、あいにく切れ味が悪く、面白さは今二つだった。


 今回の事件は、悪魔が人間に犯罪を犯させる、というシチュエーションは実にありふれているが、悪魔が直接誰かに憑りついて操るのではなく、中継アンテナ役である「媒介」のコボルドが必要、という着想が面白い。そして、コボルドが漏れ聞く情報を元にしてレイエスたちが捜査を進める、という展開は、ちょっとしたひねりだが結構新鮮だった。

 ところが、話の進め方をどうみても間違っており、その結果として、全くすっきりしない結末に到達してしまい、モヤモヤ感が酷かった。例えば、話が「ドゲットがあくまで悪魔憑き云々を全く信じず、コボルド首謀者説で突き進むものの、結局それでは説明がつかないまま事件が終わってしまう」といった形であれば納得できたと思うが、実際は結局コボルドが本当に事件の首謀者だった、という形で事件が決着してしまう。そのため、今回描きたかったのは、悪魔憑き話だったのか、はたまた狂気的犯罪者のゲーム話だったのか、と、話がどっちつかずになってしまい、どうにも満足感が無かった。

 レイエスが事件現場で感じた感じた邪悪な存在であるとか、コボルドが雷鳴の夜に一瞬顔が悪魔的な物に変わるとか、の状況を見ると、今回の事件は多分悪魔が関係しているのだろう、とは推測できる。しかし、結局コボルドに逃げられて、思わせぶりな「DAEMONICUS」という言葉も、単に被害者の名前で言葉遊びをしただけでした、と説明されると、今回の話が悪魔事件である必然性が薄いと言うか、テーマがぼやけてしまっている。結局、視聴し終わったあとは「今回の話はなんだったのか……」という徒労感に襲われてしまった。もう少し話の方向性というか、を明確にしてからシナリオを書いてほしかった。

 本エピソード一番の強烈シーンは、コボルドが突然口からオレンジ色の汚物的な物を際限なく吐き出して、ドゲットのスーツをめちゃくちゃに汚してしまう場面だろう。レイエスたちは、その汚物的な物を「しんれいたい」と呼んでいて、何のことだか見当がつかなかったが、調べてみると、漢字では「心霊体」、おなじみの言葉に直すと「エクトプラズム」、のことらしい。なるほど、これでオカルト好きにようやく理解できた。スカリーはドゲットに対して、謎の物質を「霊魂の結晶」「テレパシーをした時の副産物」「無機質の物質で、自然界には存在しないもの」といった抽象的な言葉を並べて説明していたのでさっぱりピンと来なかったが、最初からエクトプラズムといってくれれば良かったのに、という気がしてしまった。


 今回は、第1・2話からまたキャラの設定が変わっていて驚かされた。ドゲットはシーズン8の頃の正気を取り戻したのか、オカルトなどのX-ファイル的要素を一切否定して事件に臨み、逆にレイエスは「これは本物の悪魔の仕業では」とか大真面目に口にし、スカリーもまたオカルトビリーバーに復帰して、ドゲットに「科学的に説明のつかない何かが存在する」等と説教する。全員立場が第1・2話と逆になっており、設定のブレが激しすぎである。スカリーとレイエスはともかく、ドゲットは懐疑派なのかビリーバーなのかどっちなのかはっきりさせてくれ、と言いたくなった。

 今回物凄く笑ったのが、レイエスが精神病院の医師に「患者に悪魔が憑いていたような形跡は?」云々としつこく尋ねるのを見かねて、ドゲットが「おい、入院させられるぞ?」とたしなめる場面。基本的にドゲットはユーモアとは縁のないキャラだけに、素で言ったのだと思われるが、それが却っておかしかった。

 今回地味にさりげなく描かれたが実は重要な事実として、産休が終わって仕事に復帰したスカリーは、X-ファイル課には戻らず、クワンティコにあるFBIアカデミーで先生になってしまっている。つまり一線でX-ファイル事件を扱うドゲット&レイエスの後方支援役というか、脇役というか、に回ってしまったわけである。モルダーに続いてスカリーも舞台から去ろうとしているのかと思うと、寂しさが募ってしまった。


一言メモ

 冒頭にダレンとエブリンの夫婦がプレイしていたボードゲームは、英単語を並べて遊ぶ「スクラブル」(Scrabble)というゲーム。アメリカでは物凄く有名なゲームの様である。

シーズン9の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら

「X-ファイル シーズン9」あらすじ・感想まとめ